(写真はイメージです/PIXTA)

日本において成年後見制度は、認知症、知的障害その他の精神上の障害により判断能力が不十分な人の権利擁護を支える重要な手段として位置付けられており、身上保護と財産管理の支援によって、本人の地域生活を支える役割を果たすことが期待されています。成年後見制度のような権利擁護支援、意思決定支援のための制度は、諸外国の多くにも存在しますが、国によってその理念や内容は様々であり、それらは日本と異なることも少なくありません。そこでニッセイ基礎研究所の坂田紘野氏が、英国、米国、ドイツにおける権利擁護支援、意思決定支援制度について解説していきます。

3―米国

米国では、将来的に意思決定能力が失われる場合に備え、予め信託や持続的代理権を設定することが一般化している。このうち、持続的代理権に期待される役割は日本における任意後見に相当する。通常、代理権が効力を発揮するのは本人の意思決定能力が十分にある場合に限られるが、持続的代理権が設定されていた場合、本人の意思決定能力が不十分になってしまった後もその効力が持続する。法定後見がなされるのはこのような事前の備えがない場合等に限定され、例外的なケースとして位置づけられている。

 

米国では、成年後見制度は各州の州法によって規定される。そのため、その内容は州ごとに異なる。それでも、規定を一定程度統一することを望ましいとする観点から、統一州法委員会(Uniform Law Commission:ULC)*8によって、成年後見制度に関する法律のモデル法案が複数回にわたり策定されてきた。

 

本稿執筆時点(2023年3月)における、最新のモデル法案は統一後見法典(Uniform Guardianship, Conservatorship, and Other Protective Arrangements Act:UGCOPAA)だ。2023年2月時点で、統一後見法典はメイン州とワシントン州で導入されている。また、アラバマ州、コロラド州、ハワイ州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、及びコロンビア特別区(ワシントンDC)、ヴァージン諸島では過去のモデル法案が導入されている。

 

統一後見法典の下で本人の意思決定の支援を行うのは、裁判所に選任された後見人(Guardian)や財産管理人(Conservator)だ。後見人は本人の身上に関する意思決定を行い、財産管理人は本人の財産や財務に関する意思決定を行う。最も適任とされる者が必要に応じてそれぞれ選任されるため、後見人と財産管理人が異なることも想定される。また、どちらか一方のみが選任されるケースもありうる。

 

統一後見法典は後見人等に対し、本人の好みや価値観を考慮した本人中心型の個別のプランニングを行うことを求める。後見人等に求められるのは、常に本人の利益のために行動し、助言することだ。その中で、実行可能な範囲で本人による自己決定を促進し、意思決定の支援を行うことが求められている。さらに、本人自身による意思決定が困難な場合であっても、その意思決定をすることで本人に害が及ぶような例外的な場合を除き、後見人等は本人が意思決定可能であればそうすると自身が合理的に信じる決定を下さなければならない。

 

また、統一後見法典は、本人に一定の制限を課すこととなることから後見人や財産管理人の選任を最小限に留めることを要求している。そのため、裁判所は、サポートされた意思決定、技術的支援、または単一の取引を許可する命令など、より本人の制限の少ない代替案が利用可能な場合、後見人や財産管理人の選任命令を発行することが禁止されている。

 

このように、米国の統一後見法典も後見人や財産管理人の選任を最小限とすることを求める立場をとっており、後見人等を選任せざるを得ない場合も可能な限り本人の意思を尊重し、本人に課す制限が少なくなるような制度案を策定している。

 

*8:統一州法委員会は、州ごとに一貫性があり、かつ各州の多様な経験を反映した規則や手続きを提供することによって連邦制度を強化することを目的とする超党派の非営利団体であり、モデル法案に基づく州法を施行するか否かは各州の判断に委ねられる。

次ページ4―ドイツの場合

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年3月16日に公開したレポートを転載したものです。

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