(※写真はイメージです/PIXTA)

早いもので、2008年頃に起きたサブプライムショックから15年近く経過。痛みも警戒心も薄れつつあるなか、オフショアに設立された独立系の新興あるいは中小運用・保険会社等の商品について、たびたび聞こえてくるようになりました。果たしてそれらを取り扱う企業の実態とは? 資産防衛のプロであるウエルスマネージャーが解説します。

日本国内で正規の販売登録をしていないのに、堂々勧誘

ここ最近、オフショアに設立された独立系の新興または中小の運用や保険会社等の商品について、たびたび聞くようになりました。

 

運用・保険会社と表現すれば聞こえは良いのですが、実態はオフショアビークルです。ある目的のために設立されたペーパーカンパニーでSPC(特別目的会社)ともいわれるものです。

 

こういった会社の最大の特徴として、日本国内で正規の販売登録などをまったくしていないにもかかわらず、日本語の販売資料やホームページを作成して堂々と日本の投資家に配布などをして勧誘行為をしている点があります。

 

もしそうだとすれば、これらの会社は「まとも」なのでしょうか。

 

販売・紹介業者が英語の原文を勝手に翻訳するケースもあるでしょうが、オフショア籍の運用・保険会社本体そのものが堂々と日本語で商品の資料を作成し、日本人を勧誘する行為は、投資家等にとって非常にリスクが高いことを示唆しているのです。

 

真面目にビジネスをする気があれば、日本で正式に登録をします。それをしないのは、最初からその気がないのか、または、あっても登録に耐えられない商品であると想像できるのです。さらには訴訟になって訴えられてもかまわない、と自ら経営陣も考えているとも…。

 

これらの会社が実態のある国々、特にOECD、できればG7加盟国などに所在していればまだしも、産業などの実態がまったくないオフショア金融センターに所在しているのであれば、規則が緩く、将来様々なトラブルが生じる可能性が高いでしょう。

 

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「大手金融グループ」の目的との違いは?

本来こういった地域では、大手の金融グループにより、あくまでも二重課税回避の「ビークル」として利用されるのが一般的な利用法です。

 

しかし、独立系の中小の運用・保険会社はこういった利用法ではなく、大きな信用の裏付けのない運用・保険会社として運営されます。その場合は実態も掴みにくくなり、リスクが一層高くなります。

 

こういった独立系会社の特徴は主には、ケイマン諸島等のオフショア金融センターに所在しており、実際のオペレーションは色々な国でおこなっているなど、様々な形態をとっています。

 

そして、適切な比較かわかりませんが、米国を例に挙げれば、国際金融でのグアンタナモ基地にある収容キャンプのような性質も持っています。つまり、米国内の規制や管理を回避するためオフショアに意図的に作られたものであり、この米国外で起きた違法無法行為には、米国所在の人間や会社がかかわったとしても、米国当局としては自国外の領域で起きた事案として責任を負う義務がない、という性質なのです。

メガ金融グループなら、不祥事を放置しない

オフショア金融センターを活用するメガ金融グループは、決して少なくありません。しかし、こういったメガ金融グループは不祥事が起きた場合の対処が違い、信用等の観点から放置はしません。それなりの対策を施していますし、善管義務違反により万が一顧客に大きな損失が生じた場合でも、保障する姿勢も資金もあります。

 

こういった大手の金融グループは、あくまでもオフショア金融センターをビークルとして使っているので、実際にそこで営業をおこなうことを前提にはしていません。また、実際の業務をおこなっているのは、通常、実態のある本国です。たとえば米国などでは、金融機関に対しての規制が厳しいので、国内にある金融機関は、特に米国内でいい加減なことはできません。

 

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「潰れたらおしまい」の独立系

しかし、独立系中小規模の運用会社等は、事情が大きく異なることがよく理解されてないようです。

 

まず、どんなに格付けなどを有していても、裏付けになる資産の規模が小さすぎるのであてになりません。極端な書き方をすれば、顧客の資産を預かったまま会社が倒産しその資産が消滅してもおかしく無いのです。その責任を他の法人や個人に追求することもオフショア籍会社であればほぼ不可能です。

オフショア籍の独立系運用・保険会社のリスクは大きい

倒産隔離(remote bankruptcy)という言葉は国際金融ではよく使われる用語で、ある会社が倒産をしても、他の法人や個人には一切影響が及ばないような仕組みを指します。オフショア金融センターでのこういった運用会社はこの仕組みそのものです。とくに経営陣などの責任を追及することが難しい構造になっているのです。

 

こういったリスクは、サブプライムショックのときのように、なんらかのストレスがかかると突如として噴出するものです。とくにコロナショック以降は低金利が続いているからこそ、注意が必要です。たとえば、最近実質破綻した米国のシリコンバレー銀行の状況や構造とは根本的に異なります。

 

シリコンバレー銀行はアメリカの法律や規制に基づいて業務をおこなっている結果、預金者すべてが守られますが、オフショア金融センターで起こった破綻については、アメリカはもちろんどこの国であっても、投資の約束を守る義務や責任はありません。もちろん、オフショア金融センターにも法律や裁判所はありますが、その強制力もほとんどありません。

 

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結論

ここ数年よく見かける、たとえばケイマン籍の「海外積立投資」「変額年金保険」など、今後金融引き締めが続き、米金利が上昇する局面において、どんな影響が出てくるのか計り知れないリスクを負っていることも肝に銘じるべきでしょう。

 

もちろん、当面はなにも起きず、こういった警告や懸念が「取り越し苦労」で「大きなお世話」となってしまうからこそ難しいのですが、商品の仕組みやそのほかの状況からみれば、日本から投資すべき海外投資ではないであろう、というのが筆者の結論です。

 

 

遠坂 淳一
株式会社 ジェイ・ケイ・ウィルトン・インベストメンツ 代表取締役

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