アメリカ経済を牽引する、GAFAMの存在
2010年以降のアメリカ経済の成長を語るうえで欠かせないのがGAFAM(Google、Apple、Facebook(現・Meta)、Amazon、Microsoft)の存在です。今や世界市場で圧倒的な存在感と影響力を誇る、巨大IT企業です。
経済産業省の産業構造審議会資料には、株式市場における日本のTOPIX(東証株価指数)とGAFAM5銘柄の過去10年間のパフォーマンスについて比較するグラフがあります。
日本のTOPIXは、2010年を100とした場合の騰落率が、2020年までプラス100~200%の間をほぼ横ばいで推移してるのに対し、GAFAMは2014年ごろから徐々に成長し2020年時点での騰落率はプラス900%を超えています。
一方で、アメリカの主要銘柄で構成するS&P500からGAFAMを除いた「S&P495」をみると、騰落率は10年間でプラス100~200%の間を推移し、一番高い時でもプラス200%をやや超える程度にとどまっています。
この「S&P495」と日本のTOPIXを比較すると騰落率はほぼ差がなく、現在のアメリカ経済の成長は、GAFAMをはじめとするスタートアップ企業が牽引しているということが分かります。
こうしたデータから、スタートアップ企業は「成長のドライバーであり、将来の雇用、所得、財政を支える新たな担い手」であると、審議会資料は指摘しています。
この他、スタートアップ企業の企業価値や生産性を分析した研究結果も複数あり、日本経済団体連合会も2022年3月の提言で「起業家のエネルギーをうまく活用し、成功するスタートアップ企業を多く生み出してきた国々が世界経済を牽引している」と説明しています。
開業率、スタートアップ企業への投資額が、ともに少ない日本
経済成長の鍵を握るスタートアップ企業ですが、その育成には、そもそもスタートアップ企業が生まれやすい土壌が整っているかどうかが重要なポイントとなります。
日本は他の先進国と比べて開業率が非常に低い状況にあります。
先述の審議会資料によると、2008年~2020年の日本の開業率は4~5%程度にとどまる一方、他の先進国では最低でも6~7%程度です。イギリスは最も高く、2013年以降、13~15%程度で推移しています。
日本の低い開業率の原因にはさまざまな見解がありますが、「失敗がこわい」という国民性や、「⾝近に起業家がいない」「学校教育」などが挙げられます。
また、スタートアップ企業の成長を支えるエコシステムの存在も重要です。特に創業間もない企業にとって、資金調達は重要な課題の一つです。
内閣官房成長戦略会議の資料によると、日本のベンチャー・キャピタル(VC)によるスタートアップ企業投資額は、G7中でイタリアに次ぎ最下位となっています。
加えて、個人がスタートアップ企業に投資することを「エンジェル投資」といいますが、日本のリスクマネー全体に占めるエンジェル投資の割合は、アメリカの15%に対し1.5%と、10分の1にとどまっているのが現状です。
スタートアップ企業への投資が乏しい状況などを背景に、日本のユニコーン企業の数は、アメリカの274社に対してわずか4社であることが示されています。