退職金の減額、不支給、返還請求…その原因は?
月収50万円、42歳のサラリーマン。退職金726万円を手にし退職。40歳を超えてからの一大決心で新天地に向かう際に、700万円を超える退職金を手にできるとしたらどうでしょうか。転職へのドキドキよりも、退職金を手にするワクワクが上回るかもしれません。
なかには車の購入や住宅ローンの返済など、退職金をあてにして検討している人もいるでしょう。しかし、
――あなたに支払った退職金、返してください
――えっ!?
と、まさかの事態に直面することも。退職金が減額や不支給、または返還を求められるケースとして、同業他社に転職した場合が考えられます。
退職金には「功労報償的性格」があるため、会社に損失があるような一定の要件を満たす場合には、退職金を減額することは合理的であると判断されることがあります。禁止・制限される行為として、同業他社への転職を退職金の減額事由として定めているケースは多く注意が必要なのです。
実際に退職金の不支給・減額が認められるかどうかは微妙な部分もありますが、退職後の同業他社への転職について減額を認めた「ソフトウェア興業事件(東京地判平23.5.12 労判1032-5)」などの判例も。一方で退職金の不支給は顕著な顕著な背信性がある場合に限るというのが一般的な判断で、退職金の支払いを命じた「中部日本広告社事件(名古屋高判平2.8.31 労判569-37)」などの判例も。
キャリアを活かして転職、と誰もが思うことでしょう。もし勤務先に同業他社への転職禁止条項があり入社の際に合意していたのなら、転職を考える前にどのような条項なのかしっかり確認しておくと安心です。