13年ぶりに国家公務員の宿舎が新設されるというニュースに「また私たちの税金が!」という批判が巻き起こるかと思いきや、その反対の声で溢れています。その背景にあるのは、国家公務員に対する同情や憐み……エリートたちが置かれている過酷な現状をみていきましょう。
月収44万円だが「もう限界です…」ブラック職場で働く「霞が関・20代エリート官僚」の断末魔 (※写真はイメージです/PIXTA)

霞が関のエリート官僚の給与は大企業並み…ただし労働環境はあまりに過酷

人事院『令和4年国家公務員給与等実態調査』によると、本府省に勤める国家公務員(行政職俸給表(ー)、平均年齢40.5歳)の平均給与月額は44万8,153万円。ボーナス(期末・勤勉手当)は4.40ヵ月とすると平均年収は735万円ほどになる計算です。

 

一方、厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒・大企業(従業員1,000人以上事業所)男性正社員の平均年収は740万円。本府省に勤める、いわゆるエリート官僚は大企業勤務のサラリーマンと同程度の給与を手にしているといえるでしょう。

 

そんななか国家公務員離れが加速していることは大きな問題になっています。人事院では昨年、総合職試験で採用した「キャリア官僚」と呼ばれる在職10年未満の中央省庁で働く職員を対象に退職状況を調査しました。調査期間は2013〜2020年。2013年度の退職者は76人で、2017年度までは微増減が続いたものの、2018年度は116人、2019年度は139人、2020年度は109人と3年連続で100人を超えました。

 

退職理由は調査中としていますが、ほかの調査から「超過労働」が大きな原因であると推測されます。

 

2020年10~11月、人事院が中央省庁の国家公務員の在庁時間を調査したところ、残業時間が80時間を超えたのが全体の11%。100時間を超えたのは5%。さらに20代かつⅠ種・総合職に絞ると、80時間超は31~32%、100時間超は16~17%と、若い職員ほど長時間労働が常態化しているといえるでしょう。

 

厚生労働省『令和2年度人口動態職業・産業別統計の概況』で亡くなった公務員(男)について、主要死因別の人数構成をみていくと、がん(38.4%)に続き、「自殺」が15.6%と続き、亡くなる公務員の6人に1人は自身で命を絶っているという状況。これは調査対象の19の業界で突出しています。その要因はさまざまでしょうが、長時間労働も主要因だと考えられるでしょう。

 

国は国家公務員においても働き方改革を進めていますが、中央省庁勤務の場合、国会対応等で長時間労働となってしまうのは、改善しようがない部分でもあります。できることは職住近接を進め、通勤時間を短縮することくらいかもしれません。