入居者の所有する冷蔵庫の重みでフローリングがへこんだ場合、貸主が費用負担する必要があるのでしょうか? 本記事では、実際に起きた退去時のトラブル事例とともに、退去シーズンに頻発する賃貸の「原状回復」に関するトラブルを予防するための方法について、柿沼彰法律事務所の柿沼彰弁護士が解説します。
オーナーができる「原状回復」トラブルの予防法
原状回復の全部または一部が借主負担となる裁判例を2つ紹介しましたが、これらは、借主が通常の使用をしていなかったという例外的なケースです。原則的には、原状回復は貸主の負担となります。そのため、貸主としては、原状回復の負担に備えておく必要があります。
貸主ができる備えとしては、想定される原状回復費用を織り込んで、賃料の設定をしたり、頻繁に借主が入れ替わることがないように、一定期間までの途中解約には違約金が発生するようにしたりすることが考えられます。
また、契約上、原状回復義務の一部を借主に負担させる特約を締結することも備えとなります。もっとも、このような特約は、消費者契約法等に違反しないように、慎重に条件を設定することが求められます。賃貸借契約はアパートという大切な資産に関わり、長期間に渡って金銭が動く、重大な契約です。信頼できる専門家の関与のもと、きちんと契約書を作成することが求められます。
このほか、部屋を貸し出す際には、必ず事前に写真を撮影して、貸し出す前の部屋の状態を示す証拠を残すことが求められます。また、賃貸借契約が終了した際には、可能な限り中立的な第三者を立ち会わせて、賃貸借契約期間中に生じた損耗の程度を明確にすることも必要です。賃貸借契約の開始前と終了後の状態をはっきりさせておかなければ、原状回復の範囲について、借主とのあいだでトラブルになってしまう可能性が高まります。
柿沼 彰
柿沼彰法律事務所 弁護士
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柿沼彰法律事務所 弁護士
公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士
マンション管理士
2010年弁護士登録。法律事務所、上場企業経営企画室での勤務を経て、2015年柿沼彰法律事務所設立(東京弁護士会所属)。主な取扱分野は中小企業法務、不動産、相続。経済学修士(東京大学)。
【主な著書】
『裁判例の要点からつかむ解雇事件の訴訟実務』(第一法規・共編著)
『裁判例からつかむ従業員不祥事事件の相談実務』(第一法規・共編著)
『依頼者の争続を防ぐためのケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい・共編著)
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