学歴による給与差は「火を見るより明らか」
受験シーズンもいよいよ終盤となり、4月からの進路が確定している高校生も多いことだろう。努力が報われ希望の進学先に合格できた生徒も、そうでなかった生徒も、また、はなから大学は眼中にない生徒もいる。
多様性がうたわれる時代となり、人生の選択の自由度は増えたとはいえ、依然として「学歴論争」は続いている。
学歴の重要性を主張する声がある一方、「自分は大卒より稼いでいる」「卒業したところで、意味のある大学ばかりではない」といった声も少なくない。
個々人の状況をつぶさに見れば、大学進学の重要性はまさに人それぞれといえるだろう。だが一方で、給与の平均値を比較すると、残酷なまでにその差は明瞭だ。
厚生労働省『令和3年賃金構造統計調査』によると、最終学歴高校のサラリーマン(正社員)の平均給与(所定内給与)は、月30.5万円、年収は500.8万円。一方、最終学歴大学のサラリーマンだと月39.4万円、年収で647.8万円。さらに最終学歴大学院卒となると、月46.7万円、年収で800.6万円となっている。
高校卒の場合は、先に卒業して社会人として働いているというアドバンテージがあるが、生涯年収ではどうか?
留年・浪人することなく、いずれも60歳まで働いたとした場合、高校卒では1億9,982万円。一方の大学卒は、2億4,275万円となっている。さらに大学院(修士2年)卒では2億9,798万円と、3億円にもう少しで手が届く金額だ。
進学にはかなりのコストが見込まれるため、その点を勘案することも大切ではあるが、高校卒と大学卒、大学卒と大学院卒では、最終的にそれぞれ「自宅一軒分」ともいえるほどの給与格差が生じている。
これはあくまでも平均値であり、学歴に関係なく高い収入を得ている人はたくさんいる。しかし、割合でみる限り、そういった人たちはやはり特殊であり、少数派だ。
統計を見る限り、子どもの学歴は「親の稼ぎ次第」
子どもの学歴には、親が及ぼす影響も少なくない。
文部科学省『令和3年度 子供の学習費調査』で、親の最終学歴ごとの教育費を見ると、小学校・中学校・高校のいずれも、親の学歴が高いほど子どもの教育にお金をかけることがわかる。
親の学歴別「子どもの教育費」
◆親の最終学歴「中学校」12万4,748円 / 32万1,276円 / 8万9,560円
◆親の最終学歴「高等学校」16万9,676円 / 31万1,910円 / 13万1,460円
◆親の最終学歴「大学」29万3,617円 / 40万3,687円 / 28万5,215円
◆親の最終学歴「大学院」41万6,007円 / 50万5,486円 / 39万2,550円
出所:文部科学省『令和3年度 子供の学習費調査』
※ 数値は主たる生計維持者の最終卒業学校別に「学校外活動費」を比較したもの。左より、子どもが小学生(公立)/子どもが中学生(公立)/子どもが高校生(公立)
また「親が子どもにどの程度の学歴を望むか」で教育費を比べてみても、望む学歴が高いほど教育にお金をかける傾向にあります。
親が望む学歴別「子どもの教育費」
◆最終学歴「高等学校まで」7万9,799円 / 17万9,630円 / 5万0,973円
◆最終学歴「大学まで」28万6,159円 / 41万0,914円 / 27万1,498円
◆最終学歴「大学院まで」56万3,657円 / ー / ―
出所:文部科学省『令和3年度 子供の学習費調査』
※数値は希望進路別に「学校外活動費」を比較したもの。左より、子どもが小学生(公立)/子どもが中学生(公立)/子どもが高校生(公立)。—の箇所はデータなし
ここから読めるのは、
親の学歴が高い → 親の給与が高い → 子どもの教育にお金をかけられる
というシンプルな構図だ。高学歴な親が、子どもに学歴を望めば、教育に潤沢なお金をかけられる。当然だが、どれほどお金をかけてもらえるのかは、まさに親次第だといえる。
「安月給は親のせい」という思いも、的を射ているのかもしれない。
近年では、企業の人材採用でも「個人の能力重視」を強調するところが増えている。だが、そもそもの前提として「大卒以上」が想定されていることが多く、大卒以外の学歴では、ライバルと競う以前に、競争するためのステージに立てないという悲しさもある。
学歴など意に介さない、自分の能力だけで稼ぐ力を身につけるのか、それとも「とりあえず、大学に行く」という選択をするのか。子を持つ親の場合、判断が問われるところだといえる。
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