物価高騰で頭が痛いなか、「携帯電話の通信費は随分と下がった」という人は多いのではないでしょうか。一方で法改正により「携帯端末は高くなった……」と感じている人も多いでしょう。しかし売り場には「激安スマホ」の文字を目にすることも。そんな状況を公正取引委員会は問題視しているようで……みていきましょう。
えっ実質1円⁉まだあったんだ「激安スマホ」公正取引委員会が緊急調査 (※写真はイメージです/PIXTA)

公正取引委員会が「激安スマホ」の実態を緊急調査

公正取引委員会は、『携帯電話端末の廉価販売に関する緊急実態調査』の結果を発表しました。そもそも2021年6月、公正取引委員会は「携帯電話市場における競争政策上の課題について」を公表し、MNO(Mobile Network Operator)3社(いわゆる掲題電話会社)に対し、自主的な点検と改善を要請。各社から改善結果等の報告があったとか。しかし、その後もスマホの「1円販売」のような極端な値引き販売が指摘されてきました。

 

さらにさかのぼること、2019年。電気通信事業法改正において、携帯電話の通信料金と端末代金は完全分離。「通信契約とセット購入時の端末代金の値引き等を上限2万円に制限」「端末の購入等(リース契約等を含む)を条件とする通信料金の割引を禁止」「通信契約とセット購入時の端末代金の値引き等について、通信契約の継続を条件とするものは一律禁止」となりました。さらに2021年10月以降に発売される端末については、SIMロックが設定された状態で販売することは原則として禁止されるようになりました。

 

これらの規制によって、「最近の携帯電話は高いなあ」「パソコンよりもスマホのほうが高い!」という状況に。「0円携帯」が当たり前だった時代は過去のものに。極端な端末の値下げは、めぐりめぐって消費者に不利益をもたらす……と、多くの人が納得し、“高いスマホ”が当たり前になっていったのです。

 

しかしながら、実際に家電量販店にいくと、「んっ、実質1円?」という案内を目にすることも。最初から端末価格は大幅に値下げされたうえで、携帯電話会社を乗り換えるとさらに2万円割引になる(回線契約の値引き2万円制限はクリアしている)になるとか、契約から2年後に購入機種を返却する契約オプションに加入すると実質価格で購入できるとか、条件等は店舗によって異なるよう。なんとも複雑怪奇ですが、そんな状況に対して、公正取引委員会は緊急実態調査を行ったわけです。

 

調査は2022年1月1日から、6月30日まで。調査対象はMNO4社とその販売代理店(関東地方に所在する店舗を運営する事業者)との間の取引において、販売台数上位のiPhone20機種、Android20機種の計40機種。

 

まずMNO4社のスマートフォンの販売方法をみていくと、以下のとおり。

 

・MNO4社はメーカーから買取仕入。全国の販売台数の9割弱が販売代理店経由、約1割がオンラインショップ等で販売。

・MNO4社のうち3社の販売代理店は、買取仕入を行い、店頭販売価格を販売代理店が設定。残り1社は委託仕入を行い、店頭販売価格をMNOが設定。

・販売代理店には、再委託先である2次以降の販売代理店が店舗を運営している場合も。

 

次に販売代理店の極端な廉価販売の実施状況をみていきます。OS別ではiPhoneで極端な廉価販売が行われていたのは11.9%。一方、Androidで極端な廉価販売があったのは19.9%と、iPhoneよりも割合は高くなっていました。端末の価格別にみていくと、4万円未満の機種で極端な廉価販売が行われた割合が高く、30.4%。10万円以上の高価格帯の機種の割合は1.6%でした。さらに販売区分別にみていくと、MNPにより転入してくる人に対して行われた場合が最も多く、全体の33.6%。新規契約時では13.9%、端末単体販売では7.0%でした。