※画像はイメージです/PIXTA

金融商品の配当金や譲渡益が非課税になるという大きなメリットから、すでに活用している人も多いNISA。令和5年度税制改正大綱により、2024年からNISAの制度内容が大きく変わることが示唆されました。本記事では、制度の変更点を公認会計士・税理士・不動産鑑定士の冨田建氏がわかりやすく解説します。

税制改正大綱でNISAはどう変わるのか?

政府は毎年の年末に、税制改正大綱を発表します。税制改正大綱とは「今後の税金の方針を定める」もので、その内容に沿って税法が改正・修正されることが通常です。令和4年の年末に発表された、令和5年の税制改正大綱ではNISAについても、いろいろと変わる旨が示唆されていました。

 

税制大綱そのものは読んでいても頭が痛くなる堅苦しい代物ですので、ここでは簡単な要約を示します。

 

令和5年の税制改正大綱のポイント【NISAの今後の変更点】

 

1.「一般NISA」と「つみたてNISA」が併用できるようになり、合計の年間非課税投資枠も360万円まで上昇する

(ただし、成長投資枠は240万円、つみたて投資枠が120万円……併用ができる)

 

2.非課税保有限度額が、たとえば従来の一般NISAであれば

 最大120万円×5年→600万円 であったのが、買付残高で1,800万円になる

 

3.非課税保有期間が5年や20年といった縛りがなくなり、無期限化となる

 

なぜ、このような変更をするのか?

ここまでは、一般的なNISAの説明を述べてきましたが、筆者なりの見解を述べてみましょう。大綱にもそのような趣旨の記載があるのですが、投資未経験の人などによる投資の促進をしたい旨が謳われています。さらに、金融商品教育が高校の家庭科に導入されましたが、大綱にも金融商品教育の充実が継続的な投資につながることを期待している文言となっています。

 

国民、特に高齢の富裕層は、金融機関に高額の貯金をしている場合が多いでが、要するにこれを投資に引き出すことを通じて、国民全体の資金の有効活用を通じた経済の活発化を指向していると思われます。このような方向性は、恒久的に政府が期待していることと考えてよいでしょう。従って、「将来のさらなる改正で、はしごを外される形でNISAの利用者が不利益を被る危険性」はあまりないと考えます。

インフレへの対処法…NISAの有効活用で資産を守る

一過性かもしれませんが、現在、これだけ物価上昇によるインフレが起きています。このため、「預金をしているだけ」でも実際の財産価値は目減りしているといってもよいでしょう。つまり、一定のメリットがある投資は、もちろんリスクも織り込んだうえで、積極的に推進したほうが賢いのです。

 

実は筆者も、2022年も年間非課税限度枠120万円を限界近くまで使って一般NISA口座で株式を数銘柄購入したのですが、物価上昇に対抗するには投資で稼ぎを増やすという選択肢も考えるべきでしょう。大綱を踏まえ、これから税法が細かく整備されると思いますが、まずは改正点や政府の描く税制の方向性を理解すべきです。

 

ちなみに筆者の場合は現状、大半のNISAで取得した銘柄はロールオーバーはせずに「5年経過前に儲かっているものは売却して利益確定し、非課税の恩恵を最大限受ける」形態としています。しかし、5年の保有期間の縛りがなくなったので、この辺りの手順も再考の余地があります。

 

従って、既存でNISAを使っている方は、いま時点で発表されているのは大綱上での今後の見込みであるため、細部がこれから定まる点に配慮しつつ「いままでと制度が変わる」ことによる「それまでの自分なりのNISAの使い方」をも再考する必要がある点も念頭におくべきでしょう。

 

 

冨田 建

冨田会計・不動産鑑定株式会社/冨田建不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所

代表

 

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