写真:PIXTA

2022年、フィリピン経済は大幅な拡大、投資の伸び、リベンジ需要に支えられ、年平均GDP成長率7.7%を記録。政府の目標範囲6.5~7.5%を上回りました。2023年、この成長を維持する見方がある一方で、厳しい予想も。一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が解説します。

比・財務長官「2023年経済成長」に自信

フィリピンのBenjamin Diokno財務長官は「2023年のフィリピン経済の成長率は6.5%と予測され、好調な製造業、安定した銀行システム、記録的な低失業率に期待している」と述べています。

 

製造業PMIはASEANで最も高く、失業率は過去17年間で最低の水準に達しています。また失業率は17年ぶりの低水準となっています。さらに政府はGDPの5〜6%をインフラ整備に充てることを計画しており、これも経済を活性化します。

 

一方で、ディオクノ長官は、世界経済の減速が2023年のフィリピンの成長に影響を与える可能性があることも指摘しました。それでも、フィリピン経済は2023年もアジア太平洋地域で最も高い経済成長率を達成する国の一つと予想されています。2022年第4四半期のGDPが、1月26日にフィリピン統計局(PSA)から発表されますが、この発表が、フィリピン経済の成長モメンタムを知るヒントになるはずです。予想を上回る数字が出れば、フィリピンの株式市場の上昇に弾みがつくでしょう。

 

地政学的な懸念を除けば、短期的には、大きなネガティブサプライズが発生する可能性が少なく、現在の世界経済の逆風については、株式市場は、すでに織り込み済みと見られています。

 

欧米・格付会社は政府予想を下回る予想

格付会社フィッチによると、フィリピン中央銀行(BSP)は、上半期に政策金利を6.25%にするために、ベンチマーク金利を最大75ベーシスポイント(bps)引き上げる可能性があるとしています。

 

昨年、BSPはベンチマーク金利を350bps引き上げ、インフレを抑えるために14年ぶりの高水準の5.5%に引き上げました。インフレ率は、11月の8%から12月に8.1%の14年ぶりの高水準に達しています。これにより、2022年通年のインフレ率は5.8%となり、2008年以来の最高値となりました。これはBSPの通年の予測と一致しましたが、インフレ目標の2~4%を大幅に上回っています。

 

BSPのメダラ総裁は、2月16日に開催される今年の最初の政策会議で、インフレをさらに抑制するために25bpまたは50bpの利上げを表明しました。

 

米国連邦準備制度理事会(FRB)は昨年、政策金利を425bps引き上げました。さらに、インフレと戦うために今年も引き締めを続けることを示唆しています。2022年10月17日の対ドルで59ペソの記録的な安値を付けて以来、ペソは8%程度上昇しています。

 

また、フィッチは、国内総生産(GDP)が2022年の推定7.4%から今年は5.9%に減速する可能性があることを指摘しました。これは、2023年の政府の6~7%の成長目標をわずかに下回っています。

 

フィリピン経済は、2022年第3四半期も回復力を維持しました。経済は、大幅な拡大、投資の伸び、リベンジ需要によって支えられました。第3四半期のGDPは+7.6%で、年平均GDP成長率は7.7%になりました。これは、2022年の政府の目標範囲である6.5~7.5%を上回っています。

 

しかし、経済の強さを今後維持するのが難しい兆候があります。たとえば、2022年第3四半期に在庫が増加したことは、景況感が弱まり続けている一方で、需要が減退している可能性があることを示唆しています。

 

加えて、フィリピンではインフレ圧力が収まっていません。インフレ率が上昇すれば、中央銀行は利上げサイクルを継続するようになり、高金利は経済に悪影響を与え、消費と投資の伸びを圧迫する可能性があります。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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