岸田首相の「異次元の少子化対策」発言に「非正規社員を対象とした子育て支援」が加わり、大きな波紋を広げています。確かに「今までにない」政策かもしれませんが、当の本人たちからは「そんなの意味ない」という声も。みていきましょう。
非正規男性、岸田首相「異次元の少子化対策」に苦笑…「結婚すらできない」悲惨すぎる給与額 (※写真はイメージです/PIXTA)

子育て給付金は嬉しいけれど…非正規社員の低すぎる給与

話題になっている、岸田首相の「異次元の少子化対策」。2022年の年間出生数が80万人割れと危機的な状況のなか、飛び出した発言ですが、その基本的な方向性は「児童手当中心とした経済的支援の強化」「学童保育や病児保育、産後ケアなどすべての子育て家庭への支援拡充」「育児休業の強化を含めた働き方改革の推進」と既存政策であったため、異次元というワードに違和感を覚えた人が続出。波紋を広げていました。

 

そこにきて、さらに「非正規労働者などを対象とした新たな子育て支援の給付制度を新設」という報道。給付対象は、育休を取得できない非正規労働者や自営業者など。問題となる財源は、年金や医療保険、社会保険料を合わせて月に数百円程度引き上げ、拠出金を積み立てる形をつくるといいます。

 

そもそも原則として1歳未満の子どもを養育するために従業員が休業した場合に支給される「育児休業給付金」。受給対象は、雇用保険制度に加入している会社員だったため、自営業者などは含まれていませんでした。今回はその対象外だった層に対してお金の援助を行うというもののようです。

 

さらに岸田首相は「従来の省庁の縦割りではなく、横断的な取組み」を強調。しかし実質的な増税が前提となるだけに、このまま支持を受けられるか微妙です。

 

世間からは「非正規を理由に子どもを諦めている人たちはいると思うから、有意義な政策だ」という声が上がる一方で、当事者の非正規社員の人たちからは「非正規で子育てって……対象者がどれほどいるんだろう」と疑問の声も多く聞かれます。

 

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』で、非正規社員男性の給与事情をみていくと、平均月給は(所定内給与)は24万1,300円、年収で342万7,300円。一方で日本の男性会社員の平均給与は月33万7,200円、年収で546万4,200円。月給で10万円、年収で200万円ほどの差があります。

 

男性非正規社員の給与を年齢別にみていくと、20代後半で月給が20万円台になったのち、30万円台に達することはありません。

 

【男性非正規社員の給与の推移】

20~24歳:187,800 円/2,590,500 円

25~29歳:212,800 円/2,992,500 円

30~34歳:218,700 円/3,057,600 円

35~39歳:225,100 円/3,139,900 円

40~44歳:230,400 円/3,225,300 円

45~49歳:236,200 円/3,320,600 円

50~54歳:246,900 円/3,446,700 円

55~59歳:242,800 円/3,385,400 円

60~64歳:274,700 円/4,101,600 円

 

出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より

※数値左より所定内給与/年収