老後の暮らしを支える公的年金。ただ「現在の水準の年金がもらえるか」といえば、はっきりいって難しく、できることなら「年金に頼らずに生きていける」だけの資産形成は進めたいもの。では本当に必要最低限の暮らしを考えるなら、どれくらいの貯蓄が必要なのでしょうか。みていきましょう。
60歳で定年退職…「働かずに100歳まで生きる」ために必要な「最低限の貯蓄額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

本当に「老後に2,000万円」は必要か?

厚生労働省『令和3年簡易生命表』によると、2021年時点、日本人の平均寿命は女性が87.57歳、男性が81.47歳。また、100歳以上の長寿者は 2022年9月1⽇時点で9万0,526人。100歳以上人口は圧倒的に女性が多く、全体の89%を占めています。また100歳以上人口の増加は52年連続で、日本が世界有数の長寿国であることの証明となっています。

 

寿命が延びれば延びるほど「老後」の期間が増えていくことになりますが、そこで気になるのが高齢者の収入。現役時代、会社員であれば「給与」が収入の大半を占め、一般的に年齢を重ねるごとに増えていきます。一方、高齢者は「年金」が収入の大半を占め、過半数が「収入は年金」だけ。給与のように年齢を重ねるごとに増えていく、というものではなく、基本的に給付が始まると死ぬまで一定です。

 

そのため不安はいろいろ。その最たるものが、昨今の物価高。ある程度のインフレに対応できるような制度であるといわれているものの、これだけの物価高だと、はっきりいってお手上げ。このような場合、「年金だけで暮らしている」という高齢者はあっという間に生活苦に陥ってしまいます。そのため、現役時代に必要なのは、不測の事態に対応できるだけの資産を築くことだといえます。

 

では、どれだけの貯蓄が必要なのでしょうか。2019年に突如として沸き起こった「老後資金2,000万円不足問題」。これは高齢夫婦が65歳から30年暮らしていくのに、年金のほかに2,000万円必要というもので、これを機に資産形成の重要性が大きく叫ばれるようになりました。

 

この問題の根拠となったのが総務省『家計調査』。ここで65歳夫婦ともに無職世帯の毎月の赤字額が月5万円強。1年で60万円強、30年で2,000万円弱赤字となるというシミュレーションがなされました。ただこの家計調査、当然のことながら、毎年結果は異なり、同条件でも、数万円の誤差があります。月に1万円の誤差でも、1年で12万円、30年で360万円の誤差になるわけですから、参照にする年によっては2,000万円を上回ったり、または2,000万円を下回ったりするので、一概に「老後に2,000万円必要」とはいえないのが実情です。