おたふく風邪とは?
おたふく風邪の正式名称は「流行性耳下腺炎」。耳の前から下側にかけて「耳下腺」という唾液腺があり、その部分が炎症を起こして腫れる様子が「お多福」に似ていることから「おたふく風邪」と呼ばれています。
原因となるムンプスウイルスに感染すると、2~3週間の潜伏期間を経て発症します。患者の約6割が6歳以下の子どもで、保育園や幼稚園などの集団生活が始まった頃から感染しやすくなります。ウイルスは唾液中に大量に存在するため、咳やくしゃみなどの飛沫やお友達と触れ合うことによる接触感染で広まります。
潜伏期間がとても長いことと、症状が出る4~5日前から感染力があるので、お友達の発症が分かったタイミングではすでに感染していることも多く、予防が難しいのも特徴の一つです。
基本的には一度感染したり、ワクチン接種によって免疫ができたりすると、その後ほとんどかかることはない感染症と言われています。
おたふく風邪の診断基準と症状
おたふく風邪にはインフルエンザのように、その日に感染を確認できるような検査薬がないため、耳下腺の腫れと周囲の感染状況を見て総合的に感染を判断します。お子さんが耳の下あたりの痛みを訴えたり、食べ物を噛んだり飲み込む時に痛い、触ってみて腫れている場合は感染が疑われるので、かかりつけ医に相談してください。
耳下腺の腫れは、ほとんどの場合両側ともに現れますが、片側の場合もあります。48時間以上痛みと腫れが続き、38度程度の発熱を伴うこともあります。
また感染しても症状の出ない「不顕性感染」も3割ほど見られます。
注意が必要な合併症「ムンプス難聴」
おたふく風邪にかかってもほとんどの場合は軽症で済みますが、ごくまれに髄膜炎や精巣炎、卵巣炎、膵炎などの合併症を引き起こすことがあります。頭やお腹の強い痛みを訴える場合は、すぐに病院にかかってください。
これらの合併症よりもさらに注意が必要なものに「ムンプス難聴」があります。以前は数万人に一人と言われていた合併症ですが、最近の調査ではその100倍近くの患者がいるとも言われています。
ムンプス難聴は、ムンプスウイルスが内耳に感染することで発症し、多くは片耳に高度難聴が生じます。高度難聴とは、近くにいる人の話し声を聞き取ることができず、耳元で大声で話しかけられないといけないような状態・レベルの難聴のことをいいます。片耳の場合、特に年少児では日常生活の中で聞こえの悪さを自覚しにくく、ある程度成長してから判明することがあります。
現在、ムンプス難聴には治療法がなく、かかってしまうと永続的な障害として残ってしまうことも。おたふく風邪にかからないことだけが、唯一の予防策になります。