(※写真はイメージです/PIXTA)

施設へ入所した父親のマンションを賃貸に出そうとしたところ、不動産会社からサブリースを持ちかけられた女性。家族で納得のうえ契約しましたが、しばらくして父親が急逝。遺産分割のためマンションを売却したいと考えますが、貸主からのサブリース契約解除は不可といわれ…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

高齢父、施設へ…好立地のマンションが空室に

今回の相談者は、50代の会社員の吉田さんです。父親が亡くなったあとのマンションの売却について困っているということで、筆者の事務所に訪れました。

 

吉田さんは長女で、妹が1人います。いずれも20代で結婚し、自宅を出ています。

 

「10年前に母親を亡くしておりまして。その後は父親がひとり、都内の自宅マンションで生活していました。ここ数年は週に3回ほどヘルパーさんの訪問を受けていて、私と妹もちょくちょく顔を出して様子を見ていたのですが…」

 

サポートを受けながら、平穏に暮らしていた吉田さんの父親ですが、風呂場で転倒し、足を骨折し、入院。その後は自力での歩行が難しくなったことから、介護施設に入所することになりました。

「こちらのマンション、サブリースしませんか?」

「父親が施設に入ったあと、今後、以前のようなひとり暮らしに戻ることは難しいだろうといわれました。それで、父親と妹とも相談して、荷物を整理して賃貸に出してはどうかという話になったんです。家賃が入れば、施設の費用も賄えますし…」

 

父親のマンションは、少々築古ではありますが、最寄り駅から徒歩1分、周囲には商店街もある好立地で、3LDK・75平米の広さです。吉田さんが知り合いに相談したところ、不動産会社を紹介してくれました。すると、管理費込みで18万円の賃料が想定されるといわれたため、すぐにマンションのリフォームと賃貸募集を依頼したそうです。

 

「リフォームして、そろそろ募集を始めようというとき、不動産会社からサブリース契約の提案があったんです。想定賃料の80%で借り上げてくれて空室の不安もなくなりますし、賃貸契約は不動産会社が行い、入居者とのやりとりも不要ということでした。父親と妹に話したところ、2人とも賛成したので、契約することにしました」

父親の急逝で「遺産分割」が必要に

ところが、しばらくして父親が急逝。マンションはまず長女である吉田さんが相続し、その後は売却して妹と分けようという話になりましたが、売却する段階で、不動産会社からはサブリース契約は解約できないと言われてしまったのです。

 

吉田さんは、改めて不動産会社との契約書を確認したところ、解約条項は「不動産会社側からのみ」とされており、担当者に聞いても「貸主からは解約できません」という回答でした。

 

吉田さんの相談を受け、筆者からも提携先の弁護士に確認してみたところ「借地借家法28条」が適用されるため、貸主からは「正当な理由」がない限り解約できないとの回答です。

 

借地借家法第28条の内容は、下記の通りとなっています。

 

「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」

 

正当な事由の一例として、建物が老朽化して倒壊しそうといったものがありますが、吉田さんのケースでは当てはまりません。

サブリース契約解除には、大変な困難が…

しかし吉田さんは、それでも妹と父親の財産を分け合うために、サブリース契約を解約して、マンションを売却したいと考えています。提携先の弁護士からは、「解約違約金の交渉をして、合意する方法を見つけていくしかないと思います」とのアドバイスがありました。

 

吉田さんは仕方なく、これから弁護士を交えて不動産会社と交渉することになりました。

 

不動産オーナーと不動産会社の間でしばしばトラブルになるのが、このサブリース契約です。経年による家賃の見直し・減額については周知が進んできているように思いますが、借地借家法第28条にある、原則、オーナーから契約解除ができないという点は、あまり知られていないかもしれません。

 

サブリース契約の際には、契約書に中途解約条項があるかどうかも含め、よくよく精査することが大切です。場合によっては、解約を希望した際、高額な違約金を支払う旨の条項が記載されていることもありますから、しっかり内容を確認しなければなりません。また、契約時に不明点がある場合は、弁護士等の専門家に相談するなどして、万全の対策を取るようにしましょう。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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    本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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