国土交通省が公共事業の「BIM/CIM原則適用」を決めるも…建設業界で「CAD離れ」ができない理由

国土交通省が公共事業の「BIM/CIM原則適用」を決めるも…建設業界で「CAD離れ」ができない理由
(写真はイメージです/PIXTA)

国交省は2020年4月、2023年からの公共工事における原則BIM/CIM化を決定しました。いよいよ今年から始まるBIM/CIM原則適用に向け、多くの建設会社ですでにBIMを取り入れられるも、思うようにBIM化が進まず改革についていけないといいます。なぜでしょうか、みていきます。

 

「フロントローディング」という考え方

BIMを浸透させていく際にもうひとつ重要となるのが、フロントローディングという考え方です。フロントローディングとは設計の初期段階に負荷をかけ、作業を前倒しすることです。前述のとおり、BIMを用いると設計初期段階から必要な3Dモデル(BIMオブジェクト)の制作や属性情報の入力といった作業が発生します。

 

設計初期段階での作業が増える代わりに、従来のやり方では実施設計段階で表面化してきた図面の不整合や未決定事項の調整が減ることになりますので、結果として着工前の調整に伴う設計業務の負担や工事のコストアップ、工期への影響を抑えることが可能です。

 

『図解入門 よくわかる最新BIMの基本と仕組み』(秀和システム)を参考に作成
[図表]フロントローディング 『図解入門 よくわかる最新BIMの基本と仕組み』(秀和システム)を参考に作成

 

ただし、設計初期段階での作業が増えるにも関わらず、従来のスケジュール感でプロジェクトを進めてしまうため、設計者にとっては基本設計時にかかる負担が大きくなってしまいます。

 

設計スケジュールの組み立ては発注者側との調整もあり、従来から大きく変更することはすぐには難しいと思います。フロントローディングという考え方が発注者側に浸透するまでのあいだは、基本設計時における設計人員の増強や外注パートナーに協力を依頼するなど、設計業務とモデル制作業務をわけることで負担の分散を行うといった工夫が必要になります。

まとめ

手書き図面からCADに変わったときのように、CADからBIMへの変更も最初は抵抗が大きいかと思います。ただし、さまざまな技術が進化している現代において、BIMを活用することは建築ライフサイクル全体で多くのメリットをもたらし、業務の効率化においても多大な恩恵を受けることにつながります。2024年4月からは建設業も労働時間の上限規制を受けることになりますので、BIMの導入を前向きに考えていくべきでしょう。

 

 

 

藤麻 貴博

株式会社 STUDIO55 

ソフトウェア統括部 チーフプロデューサー

 

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