(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年度「税制改正大綱」が発表されました。特に、資産家にとって、財産を次世代に移転する相続対策の王道であった生前贈与について、来年以降どうなるのか、気にされていた方も多いと思います。

20%以下の税金(税率)は軽い?「生前贈与あるある」

続いて、生前贈与に関して非常に多くのご相談を受ける「生前贈与あるある」について、二点ほど取り上げたいと思います。

 

まず一点目。お金がある方は、生前贈与はそもそも年間110万円以内にこだわる必要がないということです。基礎控除(贈与金額から差し引ける金額のこと)が110万円なので、“110万円までなら非課税”は事実ですが、110万円を超えて贈与することももちろん可能です。

 

贈与税はかかりますが、ある程度の金額までであれば、実は贈与税はそれほど高い税率ではありません。「贈与税は高い税金なのでもったいない」と誤解されている方も多いですが、「贈与税を納めてでも生前贈与した方が、結果的に相続税も含めた税負担が(とても)お得になる」ことはよくあるのです。

 

例えば、祖父母や親が18歳以上の孫や子へ贈与する場合、310万円の贈与で、贈与税は20万円。510万円の贈与なら贈与税50万円です。

 

このように数十万円の税金が発生するのでやっぱり110万円以内がいいと思われがちですがそうではありません。税金の世界では20%以下の税金(税率)は軽いのです。

 

例えば金融所得課税。株式や預金などの金融商品から得られた所得に課される所得税率は20%。その税率を岸田首相が引き上げる方向性の発言をしたところ、金融界から猛烈な反発が起きたことも記憶に新しいところです。

 

また、贈与税や相続税の最高税率は55%なので、それと比べれば、310万円や510万円くらいの贈与の税率は軽いのです。贈与税の負担率を見てみると、310万円なら6.4%、510万円なら9.8%です。

 

消費税よりも軽い税率で贈与できるので、金融資産が多い方は110万円を超えて贈与することも検討するべきでしょう。二次相続の場面では、特にこの影響(メリット)が大きくなります。

 

そして二点目は、「不動産の生前贈与はどうなの?」ということです。ケースバイケースではありますが、多くのケースで不動産は生前贈与には適していません。

 

理由は「生前に不動産を動かすと、贈与税以外にも登録免許税と不動産取得税が課税されるから」ということなのです。そもそも贈与税自体が大きくなりがちです。相続時精算課税制度を利用するということもありますが、基本的には相続税負担を軽減する効果はありません。

 

親が亡くなったときに子どもへ不動産を動かす(相続登記)のであれば、不動産取得税はゼロで、登録免許税が0.4%です。

 

しかし、生前に不動産を動かすと、不動産取得税と登録免許税が合計5%(軽減措置もありますが)かかります。これも意外と負担になります。

 

相続時であれば0.4%、生前は5%と、なんと10倍以上も税額が異なるのです。また、生前に不動産を動かすと「小規模宅地等の特例」といって、大幅に土地の評価額を減額(50~80%)できる相続税の特例が使えない可能性も高まってしまうのです。

 

それ以外にも、築年数の経った収益不動産(アパートやマンションなど)を子どもや孫に生前贈与して、賃料収入を彼らに直接渡したいという方も多いですが、建物だけを生前贈与で動かすのであれば、そこに銀行借入や、敷金などがどうなっているのかも重要なポイントです。

 

専門的な話ですので省略しますが、将来返さなければいけない債務をそのままにして贈与してしまうと、負担付き贈与という論点が発生してしまい時価譲渡の問題も出てきます。要は、不動産の生前贈与は現金と異なり様々な論点があるので“当初の予定が狂う”ということになりがちなのです。

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