(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人は、心配性で用心深い国民性だといわれています。そのせいか、他国の人々とくらべても、ダントツに保険が大好きです。保険に入ることで安心して日々を過ごせるなら幸いですが、一方で、不安解消のために不要な保険契約をしているケースも散見されます。最低限の費用で効率的に安心を得るためのポイントを、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

確率的に考えるなら、保険は「損な取引」

心配性な国民性だといわれている日本人は、みんな保険が大好きです。保険に加入していることで「何となく安心」できるのでしょう。しかし、保険に加入する前には、本当に必要な保険かどうかを、しっかり考えるべきだと思います。なぜなら、保険は「確率を考えれば損な取引」なのですから。

 

保険会社の費用と利益は、保険に加入している客が払う保険料と客が受け取る保険金の差額です。つまり、客全体としては、その分だけ損をしているわけです。それでも必要な場合には保険に加入するべきだ、というのは、悲惨な目に遭わないためなのです。

 

たとえば専業主婦と乳飲児を養っている大黒柱に万が一のことがあったら、遺族が路頭に迷ってしまうでしょう。そんな万が一を避けるために、損だとわかっていても生命保険に加入する必要があるわけですね。

 

自動車を運転するときの保険も同様です。大事故を起こして何億円も損害賠償を払うことになったら、自分が破産して悲惨になるのみならず、被害者も賠償が受けられずに悲惨な目に遭ってしまうからです。

生命保険の必要性…独身サラリーマンや高齢者は?

独身の新人サラリーマンに向かって「一人前の社会人になったのだから、保険に加入しないと」などと勧誘する人がいるかもしれませんが、保険に加入することは一人前の社会人であることと何の関係もありません(笑)。

 

独身の新人サラリーマンに万が一のことがあっても、悲しむ人はいるでしょうが、誰かが路頭に迷うわけではありません。それなら、生命保険は不要でしょう。誰かを養っているという稀な場合は保険加入が必要でしょうが、そうしたケースを除き、保険に加入するより、将来のために貯金に励むほうがいいでしょうね。

 

退職金を受け取った元サラリーマンについても同様です。万が一のことがあっても、配偶者は退職金を相続するわけですし、遺族年金も受け取れるかもしれませんから、路頭に迷うことはないでしょう。それなら、生命保険は不要でしょう。

 

夫婦共働きで子どもがいない、あるいは子どもがある程度の年齢以上なら、やはり生命保険は不要でしょう。自分に万が一のことがあっても、遺された家族はそれぞれ自分で生活費を稼ぐことができるでしょうから。

医療保険の必要性…保険対象外の医療には役立つかも

では、医療保険は必要でしょうか? 大病を患って高額の医療費がかかるリスクに怯えて保険加入を考えているのであれば、その前に自分が加入している健康保険の内容を調べてみましょう。

 

日本には「高額療養費制度」というものがあり、どんなに高額の医療費がかかっても自己負担の上限があるのです。上限は所得によって異なり、低所得者は上限が低くなっていて、ある程度の蓄えがあれば何とかなるはずです。

 

したがって、医療保険は保険対象外の最先端医療を受けたいといった場合を除いて、不要だと思われます。

保険は稀な不幸に備えるもの

保険は「滅多に起きないけれども、起きたら悲惨な目に遭う」というリスクに備えるものです。ということは、多くの人が被害に遭うようなリスクは保険に適さないのです。

 

極端な話、国民の全員が感染する病があり、それに罹患したら保険金がもらえる、という保険があっても、払った保険料から保険会社のコストと利益を差し引いた金額が戻ってくるだけですね(笑)。

 

ということは、たとえば「最近、がんで亡くなる人の割合が増えています。がん保険に加入しましょう」と言われたら、「最近、がん保険の保険料が値上がりしているはずだから、保険に入る必要性が薄れているかもしれない」と考えてみるべきなのです。

 

子どもを大学に進学させると決めたら、大学の費用はほぼ確実に必要になりますから、学資保険に加入するのではなく貯金に励めばいいのです。万が一のときのために掛け捨ての生命保険に加入しておけば、子どもの大学進学費用の心配はほとんど解消できるでしょうから。

解約はちょっと待って!…「払い済み」にする選択肢も

もっとも、すでに加入している保険が不要だと気づいても、解約すべきとは限りません。解約すると巨額の解約手数料がかかる(満期返戻金より遥かに少ない金額しか戻ってこない)場合も多いからです。

 

そうした場合には、払い済みにする、という手続きを検討してみましょう。すでに払った分はそのままにして、今後払う予定の保険料は払わない、ということで契約を変更できるか、保険会社に聞いてみるのです。

 

今後払うはずだった保険料を払わないわけですから、満期返戻金もその分は減るでしょうが、それは仕方のないことですね。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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