生活保護の原理原則と運用の基本原則
——生活が苦しい
——お金がない
——もう頑張れない
ネット上には、生活苦に陥っている人たちの悲鳴に近い声が数多くみられます。そんな人たちを救うセーフティーネットが生活保護制度。生活保護法の第1条〜第4条で生活保護制度の基本原理、第7条〜第10条で運用の基本原則が記されています。
第1条:国家責任の原理
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
第2条:無差別平等
すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。
第3条:最低生活
この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
第4条:保護の補足性
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
第7条:申請保護の原則
保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
第8条:基準及び程度の原則
保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
第9条:必要即応の原則
保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。
第10条:世帯単位の原則
保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。
生活保護は、「最低限度の生活」=「健康で文化的な生活水準」を保障するものであり、「利用可能な手段をすべて利用しても生活に困窮」している国民であれば「無差別平等」に受けることができるものです。またその財源は結局は税金ですから、生活保護を受けられるか/受けられないかは、厳格に審査されます。
よく生活保護者は楽をしているとか、贅沢をしているなどの批判がありますが、それは批判者の思い込みであることがほとんど。ただし不正がゼロかといえばそうではなく、2020年の不正受給件数は3万2,090件、総額126億4,659万3,000円に及びます。その事実を知ってしまうと、特にギリギリの水準でやりくりしている人は、批判したくなるかもしれません。