2023年4月1日以降、国家公務員と地方公務員は段階的に定年年齢が引き上げられ、2031年には原則65歳定年となる予定です。それに伴い、消防の現場では大きな問題に直面しているようです。みていきましょう。
平均月給40万円だが…消防士「公務員の定年65歳に延長」で「市民の安全」が脅かされる (※写真はイメージです/PIXTA)

2023年から公務員の定年が段階的に延長…将来的には原則65歳に

高齢化の進展、人材不足などを解消しようと、各所で定年引上げが行われています。地方公務員においても2023年4月1日から定年が段階的に引き上げられ、2031年4月には原則65歳が定年年齢となります。そのほか「役職定年制*1」や「定年前再任用短時間勤務制*2」なども導入されます。

 

*1:管理監督職勤務上限年齢制:管理監督職を占める職員を、管理監督職勤務上限年齢(原則60歳)に達した日の翌日から最初の4月1日までの期間(異動期間)に管理監督職以外の職等に異動(降任又は降給を伴う転任)させる。また、管理監督職勤務上限年齢に達している職員は、新たに管理監督職に任命することは原則できなくなる

*2:60歳に達した日以後に退職した職員を、本人の意向を踏まえ、従前の勤務実績等に基づく選考の方法により、短時間勤務の職に採用することができる

 

年を重ねても安心して働くことができる……そんな環境が整備されるのは歓迎すべきことですが、課題を抱えている現場もあるようです。そのひとつが「消防」。たしかに、苛酷な環境下で奮闘する消防士の人たち。すべての職員がそんな現場に対峙するわけではありませんが、高齢の職員が増えたところで大丈夫なんだろうか……万が一の時に消防士を頼りにする一般市民としては、少々不安になります。

 

先日、消防庁がまとめた『定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会報告書』にも、こんな一文がありました。

 

高齢期職員は、これまでの勤務の中で、職務に関する深い知識や数多くの事例に対応した経験、そして長年磨かれてきた技術などを有しており、定年引上げにより、これらの高い知識・経験・技術等を有する職員が増えることは、消防力の強化につながるものである。

 

一方で、消防業務は現場業務がその大半を占めており、加齢に伴う身体機能の低下や健康状態への不安が職務遂行に支障を来たす職務、いわゆる加齢困難職種と考えられ、その中で、高齢期職員が活躍し続けていくとともに、国民の生命、身体及び財産の保護等という消防業務の任務を遂行するために必要となる組織全体の活力を維持・確保していくためには、定年引上げに伴う課題に対応していく必要があるものと考えられる。

 

消防庁『定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会報告書』より

 

やはりただ右へ倣えで定年を延長すればいいだけ、ではないことを、現場はよくわかっているようです。