なぜ「外国人の生活保護」はここまで批判されるのか?
生活保護で物議を呼ぶといえば、外国人の存在。生活保護法では「生活保護は日本国民を対象とする」としていますが、一部の外国人は税金を払っていることも考慮し、生活保護法が準用されるのが原則となっています。
厚生労働省によると、2022年8月現在、生活保護を受ける外国人世帯(日本国籍を有しない被保護世帯)は4万7,382世帯、数にすると6万6,435人。近年は大きな増減はないものの、2010年代前半には急増。リーマン・ショックの景気悪化で解雇され、語学面で再就職が難しかったこと、1982年の難民条約発効に伴う国民年金法の国籍条項撤廃で、老齢年金の支給対象外となった在日外国人が無年金状態であることが大きいとされています。
よく「不法滞在者が生活保護を受けているなんてけしからん」という声を耳にしますが、さすがに不法滞在の外国人に生活保護は支給されません。日本で生活保護を受けられる外国人は、「特定活動の在留資格」のある人たちで、定住者や永住者、日本人や永住者の配偶者、難民認定された人です。就労目的の在留資格の外国人は生活保護を受給することはできません。
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、外国人労働者(平均年齢32.7歳、平均勤続年数3.4年)の平均給与は月22.8万円。推定年収は338万円です。さらに生活保護の対象となる「特定活動の在留資格」を含む「身分に基づくもの(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)」に限り平均給与をみていくと、月給は27.0万円、手取りにすると20万~21万円といったところ。年収は推定416万円ほどです。同調査で日本人の平均給与をみていくと、月給は30.7万円、年収は推定489万円ですから、懐事情は一般的な日本人よりは厳しいといえるでしょう。
出入国在留管理庁による『令和3年在留外国人に対する基礎調査』によると、在留外国人の仕事面での困りごととして、最も多く上がったのが「給料が低い」で35.6%。「採用、配属、昇進面で日本人と比べて不利に扱われる」12.6%と続きます。言語面でハンディキャップがあるなど、仕方がない部分はありますが、どうしても外国人は生活苦に陥りやすいといえるでしょう。
しかし生活保護に関して、外国人への風当たりは非常に強いといえます。それも生活保護が日本国民であることが前提であるから。「最高裁が外国人への生活保護は違法と判決している!」を根拠に批判する声もよく聞かれます。
ただし、これはまったくの誤報。元となった裁判は2014年のもので、「永住外国人が生活保護法の対象外」という内容で、「外国人は行政庁の通知に基づく行政措置によって保護の対象になり得る」「生活保護法に基づく保護の対象ではない」と、外国人と生活保護の関りについて明らかにしました。つまり「外国人は生活保護法による対象ではないが、保護される対象になり得ますよ」という判決なのです。実際、外国人への生活保護は生活保護法を準用する形で行われています。そもそも違憲判決が出ていたら、堂々と外国人を保護するはずがありません。
また外国人登録が認められた直後に生活保護申請を集団で行い、生活保護の決定がされた問題も広く知られ、外国人の生活保護への拒否感につながっています。ちなみにこの一件は、最終的に自治体が生活保護法の準用を取り消し、支給した保護費の返還を求めるに至りました。
そもそも間違った情報が広がるのは、「生活保護法を準用」と、なんとも分かりづらい基準であることも原因。また何よりも、本来保護されるべき私たちの暮らしが苦しくなるばかりという現状と、大きくなるばかりの将来への不安が根底にあるといえるでしょう。問題はかなり根深く、解決も難しいと言わざるを得ません。