(※画像はイメージです/PIXTA)

岸田首相は2022年11月25日、衆議院予算委員会で、立憲民主党の泉代表の質問に答え、EV(電気自動車)の「走行距離課税」について、現段階での導入に否定的な考えを示しました。走行距離課税はそもそも鈴木俊一財務大臣が10月20日の参議院予算委員会において、導入の余地があると言及し、批判を浴びたものです。本記事では日本の自動車関連の税制とその問題点について、走行距離課税にも触れながら解説します。

◆自動車重量税

自動車重量税については、以下の3つの問題点が指摘されています。

 

・2009年の「一般財源化」により正当性が失われている

・高い税率が「一般財源化」後も根拠なく引き継がれている

・新規登録から13年経過すると税率が上がる

 

第一に、自動車重量税は、その正当性自体が疑問視されています。

 

すなわち、自動車重量税は上述のように、ガソリン税等とともに使途が道路の整備・維持管理に限られる「道路特定財源」でした。その理由は、自動車が道路に負荷をかけることから、整備・維持管理のコストをドライバーに負担させるというものです。

 

しかし、その後、道路事情が良くなったことと公共事業が抑制されたことによって、道路特定財源は税収が歳出を大幅に上回るようになりました。

 

本来はその時点で、道路特定財源が歴史的役割を終えたとみて、自動車重量税・ガソリン税は減税ないしは廃止とするのが筋だったはずです。

 

ところが、当時の政府・与党(現在と同じ自民党・公明党の連立政権)はそうしませんでした。「一般財源」に移行したのです。

 

廃止しなかった理由は「厳しい財政事情」「環境面への影響の配慮」でした。2009年の「一般財源化」を境に、自動車重量税の存在意義がすり替えられてしまったということです。

 

小泉政権当時から「道路特定財源が道路族議員の既得権となっている」といった論調が目立ちましたが、そこから巧みに「一般財源化」という流れに持っていった形です。国民の税負担という点ではまったく変わらなかったということになります。

 

なお、以上の経緯については2005年(平成17年)12月9日に政府・与党がまとめた「道路特定財源の見直しに関する基本方針」で確認することができます(国土交通省HP参照)。

 

税制についてこのような存在意義のすり替えが認められるのであれば、たいていのことは可能ということになりかねません。

 

第二に、税率についても、疑義が呈されています。

 

現行の税率は、自動車重量税が道路特定財源だった当時、道路整備の財源が不足することを理由に暫定的に引き上げられたものです。これも、本来はとうの昔に正当性を失っていたといえます。ところが、「一般財源化」の後も特段の理由もなく引き継がれているものです。これは「当分の間税率」と呼ばれ、JAF等から批判されています。

 

第三に、新規登録から13年経過すると税率が高くなっていくという問題があります。これは、新しいタイプの自動車ほど環境に優しいからという理屈によるものです。しかし、自動車を大事にして長く乗り続けるほど税率が上がるというのは釈然としないものがあります。

 

◆ガソリン税

ガソリン税についても、道路特定財源だったものが一般財源化に組み入れられたものです。したがって、自動車重量税と同じ問題があります。

 

すなわち、本来ならば正当性が失われ廃止されるべきだったものが、「一般財源化」の際に存在意義がすり替えられ、現在にまで存続しています。また、税率についても「当分の間税率」の問題があります。

 

さらに、ガソリン税については、ガソリン価格の一部をなし、その上に消費税がかかっているという問題があります。これは税金に税金が課されるというものであり、講学上「二重課税」「重複課税」と呼ばれます。望ましくない状態であり、速やかに解消すべきものです。

 

◆自動車税・軽自動車税

自動車税・軽自動車税にも問題があります。

 

自動車税・軽自動車税は1950年に導入されたものです。当時は「ぜいたく税」の性質をもつものとみられていました。自動車はまだ一般に普及しておらず、一部の富裕層だけが持っているぜいたく品だったのです。

 

しかし、今日、自動車は一般国民に広く普及しています。また、特に、公共交通機関が発達していない地方においては、交通手段として必要不可欠なものとなっています。

 

ところが、JAFが2022年10月18日に公表した「自動車税制改正に関する要望書」によれば、日本の自動車税・自動車重量税を合わせると、欧米諸国(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ)と比べ約2.2~31倍にのぼることが指摘されています。

 

もともとの「ぜいたく税」の性質からすれば、既にぜいたく品で亡くなった自動車に対して高い税金を課するのはおかしいということになります。あるいは、自動車重量税・ガソリン税と同様、いつかの時点で存在意義がすり替わったとでもいわなければ説明がつきません。

 

さらに、自動車重量税と同様、新規登録から13年経過すると税率が高くなっていくという問題があります。これも、「ぜいたく税」なのであれば、中古車ほど税率を低くしなければ不合理です。

 

なお、2019年10月に行われた「自動車税の恒久減税」は2019年10月以降に新車新規登録を受けた自家用車のみが対象であり、この点からも、中古車はますます不利となっています。

 

このように、現行の自動車関連税制については、非常に問題が多く、もはや現行の制度を維持すること自体が困難になってきているといわざるを得ません。

 

今後、EVが普及していくにつれ、そのひずみはより顕在化していくことが予想されます。

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