製造業の課長を務める、52歳男性Aさん。世帯年収は1,400万円ほどあり、2人の子どもにも恵まれ幸せな生活を送っていました。しかし妻が脳梗塞で倒れたことをきっかけに、「介護破綻」に陥ってしまいます。いったいなにがあったのでしょうか。Aさんが「介護破綻」に陥ってしまったワケと「介護破綻」回避する方法について、FP Officeの久保雅巳氏が解説します。
手取り60万円、52歳の製造業課長…順風満帆の生活が一転「介護離職」で味わった“地獄”【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんに立ちはだかった「再就職の壁」

預金額の減少に危機感を覚えたAさんは、奥様の症状が改善してきたことに加え、周囲の助言もあったことから、奥様を日中リハビリ施設に入れ働くことにした。

 

しかし、現実は厳しかった。希望の仕事はなかなか見つからず、パートタイムの仕事をすることに。年収は離職前の10分の1以下に減少した。

 

「自分の年金まではあと3年、妻の年金はあと6年後……娘や息子にはそれぞれの生活があるし……」とAさん。「子供たちには迷惑はかけられないと『大丈夫だよ』と言ってきたが、いよいよ援助を頼まなくてはならなくなるかも」と頭を抱えた。

 

介護離職後の就職状況(再就職率・再就職までの期間)

[図表4]介護離職後の再就職率

 

厚生労働省の「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、介護で職を離れてから仕事ができていない人は20%以上いることがわかる。再就職をしている人は半数以上いるが、すぐに再就職できたわけではない。

 

また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、以下のようなデータが出ている。

 

[図表5]再就職までの期間

 

男女ともに再就職までには1年以上かかっており、1ヵ月未満で再就職できた方はわずかだ。以上から、「介護離職からの再就職は難しい」ということがデータからも読み取れる。