離れて暮らしていた息子…帰省して気づいた「母の異変」
ある日、FPである筆者のもとに、46歳男性のAさんが相談に訪れました。聞けば、「認知症の母を老人ホームに入れたいが、実家を売れないと言われた。今後の資金繰りについて相談したい」と言います。筆者はAさんに、詳しく話を聞くことにしました。
Aさんは地元の高校を出たあと県外へ進学し、そのまま県外で就職。実家に帰省するのは年に1~2回程度です。父は昨年亡くなっており、母は実家でひとり暮らしをしています。
先日、Aさんが父のお墓参りを兼ねて帰省をしたときのことです。母に父の思い出を話すと、母は「あら、そうだったかしら?」と繰り返します。前から物忘れはありましたが、体験そのものを忘れているようで、Aさんがどれだけ話しても思い出せない様子です。
また、母は絶えず物を探しており、一緒に探してみると、カギがカーペットの下にあったり、食材がクローゼットのなかにあったりと、ありえない場所から発見されます。
母の変化に違和感をおぼえたAさんは、「まさか、認知症か……?」と思いました。
「母さんももう75歳だしな……。もし認知症なのであれば、独り暮らしは大変だろう」。早速老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などといった高齢者施設を調べ始めたAさん。すぐにサポートできるよう、Aさんの自宅近くにある施設をいくつかピックアップしました。
しかし、入居金や月額利用料などを払っていくには、母の年金(月16万円)だけでは到底足りません。「それなりに貯蓄はしてきたけど、母のために使うお金の余裕は正直ないな……」。考えた末、Aさんは「もし老人ホームに住むことになったら、実家を売ってそのお金を資金源にしよう」と考えました。
少しして、再び帰省したAさん。数週間ぶりの実家の様子は、さらに悪化していました。庭の雑草はぼうぼうに生え、使用済みの食器や溜まったゴミが放置されています。もともと活発で綺麗好きだった母を思い出したAさんは、思わず涙を流したそうです。
病院では予想どおり、「認知症」と診断されました。認知症とは、脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態のことです。
病院で「まずは地域包括支援センターへ相談するように」と勧められたAさんは、その足で地域包括支援センターに向かいました。