NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、地方圏への移住希望者は年々増加傾向にあるといいます。しかし、首都圏から地方への移住を検討する際に大きな壁となるのが「収入」です。首都圏と地方では、支出や収入にどれほどの差があるのか……地方移住のメリット・デメリットについて、お金の側面からみていきましょう。FP Office株式会社の久保雅巳FPが解説します。
世帯年収1,100万円の都内在住30代共働き夫婦、わが子のために〈地方移住〉を検討も…「可処分所得を減らしたくない」妻の願いを叶えるための給与額【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

地方への移住希望者は増加傾向に

2021年10月、移住支援を行うNPO法人ふるさと回帰支援センターからは、首都圏において地方圏への移住希望者が309万人との推計が示されました。

 

また移住検討と新型コロナウイルス感染症の影響については、「影響がある」と回答した人はおよそ3割。7割は新型コロナとは関係なく移住を考えていることから、地方移住はコロナ禍による一過性のブームではないことが推察されています。

 

地方移住を検討しているA夫妻

FPのもとへ相談に訪れたA夫妻(36歳の夫Aさんと35歳の妻Bさん)も、地方移住を検討しているとのこと。世帯年収の内訳はAさんが750万円、Bさんが350万円で、現在は都内の賃貸で暮らしています。

 

〈相談内容〉

 

・3歳の子どもが小学校にあがるまでに(3年以内)に、子どものため地方移住を検討している。

・地方出身の夫Aさんは「自然豊かなところでのびのび育ってほしい」との意向。妻もその考え自体には反対ではない。しかし、「生活水準を落としたくない。可処分所得は減らしたくない」という確固たる意志がある。

・そのためには、転職の際、最低どの程度の給与額であれば良いのかを知りたい。

地方移転による家計への影響は?【支出編】

移住相談会で「○○での生活費はどれくらいなのか」という相談は多くあるようです。そこで、東京都23区と地方移住の候補によく上がる長野県との比較をしてみました。

 

■住居費

東京と大きな差があるのが住居費です。3LDK賃貸物件の月額平均を見ると、東京都の平均が19.2万円、23区では28.6万円であるのに対して、長野市は8.3万円となっています。平均で月額約11万円差、年間では約130万円の差になります。

 

※賃貸サイトに2024年07月に掲載されていた物件情報の賃料(共益費く)を参考に筆者が平均を計算し作成
[図表1]住居費 ※賃貸サイトに2024年07月に掲載されていた物件情報の賃料(共益費く)を参考に筆者が平均を計算して作成

 

■食費

地域柄野菜・果物が安い、魚が高いなどの特徴あるものの、食材費に大きな差はみられません。「外食費」は東京が長野に比べ152%。東京の人のほうが外食にお金をかけている傾向にあります。

 

■水道光熱費、交通費

また、水道光熱費と交通費に関しても年間の支出に大きな差はありません。ただし、自動車が必須になったり、冬場の燃料費が大きくかかったりと、地域によって特徴があります。

 

■教育費

子どもにかける教育費は東京が大きく上回っています。東京は私立学校が多いことや、幼少時からの受験環境で塾などにお金をかける場面が多いことが影響しているようです。

 

■娯楽費

東京はレジャー関係にお金をかけて楽しむことが多い傾向にあります。

 

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[図表2]生活費・娯楽費・教育費 ※総務省家計調査より2018年11月~2019年10月2人以上の世帯のうち勤労者世帯を基に筆者が作成