10月米国消費者物価指数CPIで金利上昇観測が後退。一方でパウエル議長の発言ではターミナルレート上方修正の可能性が視野に

10月米国消費者物価指数CPIで金利上昇観測が後退。一方でパウエル議長の発言ではターミナルレート上方修正の可能性が視野に
(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が、「今週のアジア経済現地レポート」をお伝えします。

インフレ抑制までにはまだ長い道のり

そんななか、14日は、ウォラーFRB理事が、10月の米CPIについて、「指数の上昇率が前年同月比7.7%に鈍化したことは良いニュースだが、一つのデータに過ぎず、FRBが利上げを停止するまでには、『まだ道のりは長い』」との認識を示した。

 

同氏は、「FOMCで4会合連続で0.75%幅の利上げを実施した後で、次回12月のFOMC会合、またはその後の会合では、利上げ幅を0.5%幅に縮小することはあり得る」としながらも、「利上げの停止に近づいているわけではない」として、注意を促した。

 

また、「インフレ率がFRBの目標近くに低下するまで、金利はしばらくの間、高止まりする」とし、「まだ道のりは長く、次回会合か次の2会合で終わりになるとは考えていない」と、同理事は語った。

パウエル発言に改めて注目

インフレ圧力がピークをつけたと仮定しても、FRBが目標とするところは2.0%近辺までインフレ率を落ち着かせることである。11月FOMC後の会見でパウエル議長が示唆したことをおさらいしておくと、今後のFRBの対応が見えてくるだろう。

 

パウエル議長が明確に述べたことは3つに集約される。一つは、「利上げペースをこれまでより緩めることを検討する」ということ。

 

すなわち、「政策金利の絶対水準を、インフレ抑制に十分な水準まで引き上げるために過去4回のFOMCでは上げ幅にこだわってきたが、12月以降は雇用市場やインフレ率の動向をより参照しながら、金利の引き上げ幅を検討する」というのである。市場は、この点にのみ飛びついている感が強い。

 

重要な点は、もう2つある。「利上げの着地点(いわゆるターミナルレート)は従来想定されていたより高くなる可能性がある」と述べていること、そして、金融引き締め局面も「想定してきたよりも長期化する可能性がある」という点である。

 

これらに注意を払って、今年のFOMCのドットプロットを再度見返していただきたい。金利予想は、3月・6月・9月と、いずれもターミナルレートは上方修正されてきた。結果はインフレ率の動向のみが知るところであるが、パウエル議長の発言からは、引き続き、ターミナルレートがより高くなることを警戒する姿勢を維持していることがわかる。

 

そして、FOMCでの利上げ幅が縮小する一方で、ターミナルレートがより高くなるのであれば、金融引き締め局面はより長期化することを意味する。金融政策に関する不確実性が高い状況は続く。それがパウエル発言の真意であるということを理解しておくべきだろう。

 

また、そうだとすれば、「CPI発表後に市場に広がったターミナルレートが大きく引き上がることはない」との思惑は、再度しぼむ可能性を考えておくべきだろう。

 

10月CPIにしても水準としては依然高い。筆者は、CPI発表後の市場の反応ほど楽観的な評価を正当化できるかは疑わしいと考えている。インフレ高進が抑制できるまでに状況が変わったと評価するには早計であろう。14日のウォラーFRB理事発言も、FOMC後にパウエル議長が記者会見で発言した内容と符合している。

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

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