●上院で両党48、下院で民主党188、共和党208の議席を確保した模様、ほぼ予想通りの展開。
●下院の多数派は共和党の見通し、焦点は上院で12月6日のジョージア州決選投票の結果待ち。
●上院の結果に関わらず、バイデン政権は大きな政策変更が困難に、市場の関心は再度インフレへ。
上院で両党48、下院で民主党188、共和党208の議席を確保した模様、ほぼ予想通りの展開
米国では11月8日に中間選挙が行われ、一夜明けた9日も開票作業が続いています。上院は今回、定数100議席のうち、3分の1が改選されます。民主党の改選議席数は14(非改選36)、共和党の改選議席数は21(非改選29)です。報道によると、米国東部時間の午後7時(日本時間の11月10日午前9時)時点で、当選確実は民主党が12、共和党が19となっており、非改選議席を含め民主党と共和党が共に48議席を確保した模様です(図表1)。
一方、下院は今回、定数435議席の全議席が改選されます。中間選挙前の議席数は、民主党が220、共和党が212でした。報道によると、米国東部時間の午後7時時点で、当選確実は民主党が188、共和党が208となっています(図表2)。いずれも過半数の218に届いていませんが、共和党が優勢の状況となっており、一部では早々に、共和党が下院の過半数を奪還と報じられています。
下院の多数派は共和党の見通し、焦点は上院で12月6日のジョージア州決選投票の結果待ち
中間選挙前の議席獲得予想では、上院がほぼ互角、下院は共和党が優勢となっていたため、おおむね予想通りの展開となっています。ただ、共和党の巻き返しに思ったほど勢いがないとの指摘もあり、共和党が無党派層を十分に取り込めなかったものと推測されます。それでも、下院の多数派は民主党から共和党に移る可能性が高く、焦点は上院で民主党が多数派を維持できるか否か、となります。
現時点で、上院選の結果が判明していない州は、アラスカ州、アリゾナ州、ジョージア州、ネバダ州の4州です。なお、ジョージア州では、得票率が50%以上の候補がいなかったため、12月6日に上位2人の決選投票が実施されます。弊社は、アリゾナ州で民主党が勝利し、アラスカ州とネバダ州で共和党が勝利するとみており、民主党が49議席、共和党が50議席を確保して、ジョージア州の決選投票を待つ展開を予想しています。
上院の結果に関わらず、バイデン政権は大きな政策変更が困難に、市場の関心は再度インフレへ
以上を踏まえると、中間選挙の結果、①上院は民主党が多数派を維持する一方、下院は共和党が多数派、②上下両院とも共和党が多数派、のいずれかになると考えられます。それぞれのケースにおける、バイデン政権の政策については、10月27日付レポート「2022年11月米中間選挙の注目点を整理する」でまとめており、ねじれ議会の影響については、10月28日付レポート「米国がねじれ議会となった場合の心構え」でまとめています。
バイデン政権は、①の場合、上院の人事承認権を用いた閣僚の指名や大統領令で、環境などの規制強化は可能であり、②の場合、通商・外交の積極化は可能ですが、いずれも大きな政策変更は困難と思われます。ねじれ議会では、政府機関の閉鎖リスクが懸念されますが、株価への過度な警戒は不要と考えます。そのため、中間選挙後は程なく、市場の関心は再度インフレに向かうとみています。
(2022年11月10日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年11月米中間選挙の途中経過 ~おおむね予想通りの展開に【ストラテジストが分析】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト