「安いニッポン」は格好のビジネスチャンス
[図表4]は中藤玲氏著「安いニッポン」に掲載されたダイソーの販売価格の国際比較であるが、ダイソーの価格でも100円均一が保たれているのは日本のみで、タイ、ブラジル、中国などの新興国であっても、日本より格段に高いことが驚きである。
しかもこの価格差は、1ドル約105円の2021年1月時点のものであるから、今の140~150円での価格差はさらに大きく拡大していると推察される(中藤氏はこの低価格は人件費と賃料安が主因とのダイソーの説明を伝えている)。
この圧倒的な価格差は大企業、中小企業、個人の誰でもが獲得できるビジネスチャンスになっているのである。
このようにグローバリゼーションの新たな進展により、従来の内需のみを顧客としていた多くの中小企業やサービス産業に、海外顧客という新たな需要先を広げた。円安はインバウンド、越境Eコマースによりただちにこれらの産業とそれが立脚している地域経済に需要数量の増加を引き起こすだろう。
以上より今回の円安によって起きるJカーブ効果は、従来以上のプラス効果をもたらす、と考えられる。そしてこの円安の背景に米中対立がある。米中対立が日本経済の追い風になるという武者リサーチの10年来の主張※が、現実のものになっている。
※ 筆者著作『失われた20年の終わり~地政学で診る日本経済』2011年 東洋経済新報社
『結局勝ち続けるアメリカ経済一人負けする中国経済~日本に吹く歴史的順風』2017年 講談社
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表