強まる米国の「脱中国」政策
米国の対中封じ込め政策は、一気に高まるだろう。10月7日米国商務省は、「半導体、スーパーコンピューターなどに関した対中輸出規制」を著しく強化した。
最先端ロジックに限定していた規制対象の範囲を大きく拡大、対象企業も長江メモリー(YMTC)等、31社・大学に拡大した。また迂回輸出を遮断するエンドユース規制、許可例外の厳格化、が打ち出された。早くも、アップルへのNANDフラッシュメモリー初納入が決まっていたYMTCの商談が事実上キャンセルされた。
また米国人、米国企業のYMTCへの設計、技術、協力が禁じられる。今後、包括的対中対抗法案として上下院で調整が続いている「米国競争法案」の下院案にあるアウトバウンド規制(対外直接投資や重要な生産能力・サプライチェーンの国外移転の審査制度の導入検討)等より広範、かつ厳格な規制が矢継ぎ早で打ち出されるだろう。
いずれ中国で生産しているアップルやテスラは、生産拠点の脱中国化を推し進めざるを得なくなるだろう。
脱中国で日本へ「ハイテク産業回帰」の可能性
急ピッチの地政学的緊張の高まりに世界の経済が追いついていない。
今後、産業界においても脱中国の機運が醸成されていくだろう。いまは新疆(シンチャン)ウィグル、チベット、香港など辺境に対してのみ適用されている人権抑圧の認定を本土に対しても広げてくるかもしれない。
産業の中国脱出のニーズの高まりに対して、どこが受け皿になり得るかと考えると、日本の優位性が浮上してくる。
日本ではかつての工場海外移転の結果、人材の不足、シナジー効果の喪失等が語られるが、それでも多くの工業力の基礎を残している。
最先端半導体では日本の地歩は失われたが、キオクシア、ソニー、ルネサスエレクトロニクスなどの日本メーカーに、マイクロンテクノロジー(エルピーダメモリ―広島工場主力)、ウエスタンデジタル(生産はキオクシアと連携)等の海外企業の生産拠点を加えると、
半導体世界生産シェアは19%、半導体製造装置は世界シェア32%、半導体材料56%(いずれも2020年OMDIA調べ)と、総合的工業基盤は世界でもトップクラス、米国や欧州より優位にある。
機械、計測機器、部品、素材などの分野で圧倒的な世界のリーディングカンパニーを多数擁している。それらが日本に回帰するだけで大きなシナジーが再生されるはずである。
富士フィルムは中国の複合機技術の情報開示・譲渡を強制した中国に対して、現地工場閉鎖という形で対応した。またキャノンの御手洗会長は「経済の影響を受ける可能性のある国々においては(生産拠点を)放置しておくわけにはいかない。
より安全な国へ移すか、日本に持って帰るか、2つの道しかない。メインの工場を日本に持って帰る」「日本国内での生産コストが低くなる円安も「(国内回帰の)大きな理由のひとつ」と述べ(10月26日)、潮目の転換に向き合う決意を見せた。
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