(写真はイメージです/PIXTA)

これまでの日本では「円高」や「国内需要の蒸発」などを背景に、資本の漏出(=ビジネス機会の漏出)が続いていました。しかし、足元の歴史的な円安や「脱・中国」の流れなどにより、日本経済の風向きが変わってきていると、株式会社武者リサーチの代表である武者陵司氏はいいます。日本は「失われた30年」を取り戻せるのか、経済復活の大チャンスといえる理由をみていきましょう。

「脱中国」サプライチェーン構築で日本投資加速へ

IMFは2023年の成長見通しを10月時点で(米国1.0、ユーロ圏0.5%、日本1.6%)、OECDは9月時点で(米国0.5、ユーロ圏0.3%、日本1.4%)と予想している。

 

日本経済は、

 

1.世界的金融引き締めのなかで緩和基調が維持されていること
2.コロナパンデミックに対する過剰反応から最も経済の落ち込みが大きかったが、その反動(リベンジ消費など)が期待できること
3.円安のプラス効果が発現すること

 

などが予想されるからである。グローバル資金は、世界で最も割安、かつ2023年の成長期待が高い日本に集まっていくのではないだろうか。

 

米中対立が急速に深刻化し、脱中国のハイテクサプライチェーン構築は、焦眉の課題になってきた。日本にハイテク産業集積が回帰する可能性は大きく高まっている。

 

“無駄金1.2兆ドル”売却で日本復活のチャンス

加えて、夢物語に聞こえるかもしれないが、日本政府のドル売り介入が進行すれば、総額1.2兆ドル(170兆円)もため込まれた外為特別会計(※)が保有する米国国債の売りで資本流出が加速される。

※外国為替資金特別会計:外国為替相場の安定(為替相場の急激な変動の際の為替介入など)のために設けられた財務省管理の特別会計。円売り・外貨買い介入に伴って取得した外貨を資産、円を調達するために発行した政府短期証券を負債として保有している。

 

経済学者の高橋洋一氏が主張するように、無駄に保有するこの巨額資金が売却されれば、為替実現益40~50兆円と、投資元本回収の120兆円、合計170兆円という巨額の余裕資金が生まれる。

 

これをハイテク・ゼロカーボン・インフラ投資などの原資として投入すれば、日本のテクノロジーは一気に世界最先頭に立つことも可能となる。

 

[図表2]主要国米国国債保有額推移

 

このように円安進行は、日本経済にまったく寄与しない形でため込まれていた巨額の対外資産の国内還流を引き起こし、日本に固く定着した「名目成長ゼロ・物価上昇率ゼロ・金利ゼロ」の「デフレ均衡」を瓦解させるトリガーになる、と考えられる。

 

政策担当者の構想力と決断力が強く求められる局面である。

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表
 

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※本記事は、武者リサーチが2022年10月25日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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