「日本人は英語を勉強しているのに話せない」とはよく言われることです。一方、日本語と同じ語順の韓国語を使用し、「日常で英語が聞こえてこない環境」も同様である韓国では、英会話教育において日本よりも高い成果が上げられています。ここでは韓国の英語教育をご紹介し、日本の英語教育における問題点を探っていきます。
韓国の「英語の教科書」から見えてくる…日本人が英語を話せないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

英語の意味を「翻訳して教えていない」ワケ

もう一点興味深かったのは、英語の意味を翻訳して教えていないことです。

 

絵や動画で状況を示し、例えば、「朝の挨拶は次のように言います」と、自国語の説明があり、“Good morning.”と音声が流れます。次に昼の挨拶、夜の挨拶がそれぞれの絵と音声で説明されます。

 

文字があるのは“Good morning.”だけ。他は英語の文字はなく、韓国語による説明文があるだけです。韓国の英語教育は自習用CD-ROMが全員に配られていて、家で繰り返し聞くように指導されています。この点が日本の教授法との決定的な違いです。聞いてリピートをする段階ではALTは必要がないと判断したのでしょう。

 

英語の実践を体験する場所としては国内に英語だけで暮らす英語村という施設がありますが、今後さらに大規模な施設を作る計画があるようです。英語を翻訳せず、自国語で書かれた説明の字幕を読み上げてから、英語の音声を聞かせる方法は自国語を読む練習にもなりそうです。

 

教育の目標は3、4年では徹底して聞いて、なぞって英語の発音に慣れ、生活に必要な基本的な言葉を覚えることです。どんな言葉を覚えるためにこの章を学ぶのか、そのために何をしなければならないかがわかりやすく解説されているので安心して学習を進めることができます。

 

韓国のテレビドラマを見る時やいろいろな場面で感じる、韓国人の情の深さ、表現が悪いかも知れませんが、しつこさが徹底した教育にも表れているような気がします。教科書の後ろ半分は付録のカード類がとじ込んであり、厚みのある紙を、手で切り離してそのまま使えるようになっています。

 

書くことは3年生の後半あたりからアルファベットと短い単語のスペルを書き始める教科書が多いようです。会話ができると単語だけでいいのです。

 

 

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五十嵐 明子

 

青森市生まれ。東京女子大学短期大学部英語科卒業。1967年から幼児の英語教育に携わり、並行して地域の子ども文庫活動に参加。

 

ラボ・チューター、ヒッポフェロウを経て、1987年にグロウバル言語文化研究会(2000年からNPO法人)の設立に参加。多言語習得を通しての国際交流活動に力を入れる(研究員・元役員)。