緋鹿萊斗氏の著書『社会人による社会人のための資本主義とは』より一部を抜粋しお届けしていく本連載。今回は「金融商品」について解説していきます。
「打ち出の小槌」で資産運用!投資信託など「金融商品でお金を増やす」ための基本 (※写真はイメージです/PIXTA)

金融商品とは

株式や債券は権利です。株式は配当をもらう権利であり、債券は借金を利子付きで返済してもらう権利です。これらの権利を金融商品と呼び、売買するのが金融取引です。

 

金融商品の価格は一定ではなく、信用や期待に伴い変動します。たとえば食品であれば味わったり匂いを嗅いだりすることができます。一方で金融商品は味も香りもしません。その商品の価値が上がるか下がるかで一喜一憂します。

 

価値の上がり下がりは他の人が欲しがるかそうでないかで決まります。みんなが欲しがれば価値は上がり、欲しがる人が少なくなれば価値は下がります。この現象をケインズの美人コンテストということがあります。これは、ジョン・メイナード・ケインズが株式市場を美人投票になぞらえて説明したことに由来します。

 

美人コンテストは、普通、自分の好みの人に投票しますが、仮に投票の代わりにお金を賭けることにし、コンテストの優勝者に賭けた人たちで掛け金を総取りできる、としたらどうなるでしょうか?

 

途端に、好みの人に投票するのではなく、周囲の人たちが投票しそうな人に投票するでしょう。もちろん周囲の人たちも同じことを考えます。

 

そうして選ばれた美人には明確な根拠が消失してしまいます。美人という地位も、今日は暑いなぁ、みんなも汗だくだなぁ、涼しそうな顔の人が選ばれそうだなぁ、などという具合に、参加者やそのときどきで変わってしまうのです。

 

金融市場では、将来価値があるとみんなが言いそうなものを、まだみんなが気づいていないうちに買うこと、つまりは青田買いが鉄則です。そして価値が上がったら売って現金化し、また次の青田買いを行うのです。

 

金融商品の価格が高騰しているニュースを見て慌ててその金融商品を買いに走るのは、青田買いをした人たちのカモになっている可能性もあります。ご用心を。