本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について、日本と比較しながら紹介していきます。
学校のPTA「最低1回は役員をやる」「会合は日中」に“違和感”…「教育先進国」オーストラリアの制度と比較すると (※写真はイメージです/PIXTA)

「学校コミュニティ」という概念

オーストラリアでは学校コミュニティという概念が確立しており、学校教育は学校だけでなく、学校コミュニティ全体が担うという考えが浸透している。

 

学校コミュニティとは生徒、保護者、教職員、地域の人々によって構成される共同体であり、地域には社会教育施設や教育訓練関係のプロバイダー、福祉関係、ビジネス産業など多様な組織が含まれる。

 

学校コミュニティ全体が生産性豊かなパートナーシップを構築することにより、学校教育への信頼が高まり、子どもの学習成果が高まると考えられている。

 

学校コミュニティで重要な役割を果たすのが「保護者と市民協会(Parents and Citizens Association、以下、P&C)」と呼ばれる組織。日本のPTAに似ているが、PTAと違うところは保護者だけでなく一般市民も参加していることだ。

 

さらに、スクールポリシーの策定など学校の意思決定にも深く関わっている。加入義務はなく、活動はすべてボランティアで行われるが、活動に参加する人は少なくない。

 

P&Cは学校ごとに組織され、その集合体が州レベルの連合組織となる。役員もボランティアだが、押し付け合う雰囲気はなく、自主的に引き受ける人が必ずいる。学校では校長や副校長などを交えて定期的に会合が開かれる。会合は誰もが参加しやすいよう夜間に開かれることが多い。

 

P&Cの活動を見ていると、できる人ができる範囲で関わるというボランティア文化が社会に根付いていることを感じる。

 

日本では年度初めの保護者会に頭を悩ます教師が少なくない。PTAの役員がなかなか決まらないからだ。役員決めがあるので最初の保護者会には参加しないという保護者も少なくない。

 

私も教員時代は役員決めで苦労することが多かった。すんなり決まることもあるが、たいていは難航する。学級経営のことなど話したいことはたくさんあるのに、役員が決まらないため時間がどんどん過ぎていく。

 

長い沈黙に耐えきれず誰かが「私がやります」と言ってくれると、救世主のように思ったものだ。何でこんなことをしなければいけないのだろうと思いながら、前もって根回しをしたり、会が終わってから個別に依頼の電話をかけたりすることもあった。

 

仕事を持つ保護者など役員を引き受けるのが難しい人がいることはわかる。仕事をしていなくても、子育てや親の介護などそれぞれに事情はある。

 

会合はたいてい日中に行われる。卒業までに最低1回は役員をやるという暗黙のきまりが存在することもある。私もそのきまりに従って役員を引き受けた。

 

有給休暇を取って勤務校の授業を自習にし、わが子の学校に足を運ぶ自分の行動に違和感を持ったことを思い出す。