娘の心に深く食い込み、人格さえ蝕む母の“毒”――。本記事では、埼玉工業大学心理学科教授の袰岩秀章氏が、自身のもとへ「相談」に訪れた母子の事例を参考に「毒親」が「毒親」になる理由を解説する。
毒親が毒親になる理由…世の親たちは「自分とは無縁」と断言できるか (※写真はイメージです/PIXTA)

毒親は日常に潜む

子どもを激しく虐待する母親だけが、娘にとって毒親になるわけではない。

 

むしろ、表面的には普通に見えることの方が、娘たちにとっては、あとから深刻になることが多い。親によって苛まれていることに気づかないまま、年月を送ってしまうからだ。

 

典型的な毒親でなくとも、世の中には、何かしら娘に対して呪詛のような言葉を吐き続けている母親もいるだろうし、世間体や常識といった言葉を振りかざしながらマイルールや非常識を娘に押し付け続ける母親も、当然いるだろう。

 

そうした中で、毒親を毒親たらしめる特徴を、まとめておこう。

 

●憎しみは絆のように

 

姑に似ているだけで娘を憎む母親がいた。自分に対する仕打ちを恨んでそれを娘にぶつけ続けた母親もいた。いずれも執拗に続き、長く長く娘を苦しめ続けた。

 

この憎むということ、執拗であること、長く娘を苦しめることが、こういった毒親たちの大きな特徴ではないだろうか。気づかないうちに、とか、良かれと思って、ではない。確信的に娘を憎み、虐げている。

 

この母親たちにとって、娘は、どれだけ虐げてもかまわないような、つまらない存在なのだろうか。いや、娘が自分に最も近い存在、自分にとってかけがえのない存在であるからこそ、自分の苦しみを渾身の力でぶつけ続けているように見える。そしてかけがえのない存在だからこそ、娘を失いかけたとき、相談に訪れもするのではないか。

 

このような関係は、娘と母親との間に特に強くみられるように思われる。

 

●可愛がるという支配、未熟さという罠

 

可愛がることが子どものコントロールにつながることは、どの家庭にでも多少はあるだろう。しかし毒親たちは、それが極端で、徹底的に自分のためなのである。娘に何かを教えたとしても、それは自分の言うことを聞かせるため、自分に奉仕させるための教育なのだ。

 

また幼すぎる母親も毒親になりかねない。自分自身が幼いために、嫁げば嫁いだ相手の言う通りに生き、娘が可愛ければ可愛がりたいという気持ちのままに育て、行き詰まればおろおろする。娘は一生それに振り回されかねないのである。