超高齢化社会である日本。年金の受給開始引き上げなど、老後の負担は年々増えています。そのようななか、甘い見通しのもと備えを怠っていたことにより「最悪の事態」に陥るケースが少なくないと、社会福祉士兼FPの武田拓也氏はいいます。日本の高齢者が直面する厳しい現実に立ち向かうには、どのような備えが必要なのか……社会福祉士として老人ホームでの勤務経験もある武田氏が解説します。
月14万円じゃ足りません…要介護の「寝たきり高齢者」が直面する悲惨 (※写真はイメージです/PIXTA)

月額20万円…年金だけでは払いきれない「介護費用」

年金2,000万円問題が話題になりましたが、実際にはもっとお金が必要になることもあります。 特に気をつけていただきたいのは「介護」です。

 

「健康寿命」という言葉があります。これは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を表します。日本の健康寿命(厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」)は男性72.68歳、女性75.38歳です。

 

2019年の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳です。平均寿命から健康寿命を引くと男性8.73歳、女性12.06歳の差があり、この期間は医療や介護が特に必要となります。

 

「介護になれば介護保険サービスが利用できるから問題ないのでは?」といった認識の人もいます。確かに介護サービスには「入所」「通所」「訪問」などさまざまな種類があり、介護の必要な人にサービスを提供しています。しかし当然、無料ではありません。

 

重度の介護状態で「寝たきり」となると要介護5の判定がされ、月に約35万円の介護サービスを利用することができますが、1割負担ですと月々3,5万円ほどのサービス利用料が発生します。さらに、おむつ代や福祉用具のレンタル代などが必要となり、在宅で介護を受けると月々6万円ほどの負担増となります。

 

65歳以上における厚生年金の平均受給額は14万円程度です。公務員や会社員の方であれば厚生年金に加入していますので、ご夫婦であれば20万円程度は年金の受け取りを見込めます。

 

しかし、これが自営業になると国民年金のみとなり、お1人当たり6万円程度の年金となります。 仕事をしているときには収入がありますが、退職したあとは年金のみとなるため、生活がかなり苦しくなるのは前述のとおりです。

 

日常の生活費だけでも余裕があるとはいえない状態で、医療費や介護の費用が発生してくると、経済的にかなり厳しい状況となります。しかし、将来の「介護費用」まで備えられている人は少ないというのが現状です。