超高齢化社会である日本。年金の受給開始引き上げなど、老後の負担は年々増えています。そのようななか、甘い見通しのもと備えを怠っていたことにより「最悪の事態」に陥るケースが少なくないと、社会福祉士兼FPの武田拓也氏はいいます。日本の高齢者が直面する厳しい現実に立ち向かうには、どのような備えが必要なのか……社会福祉士として老人ホームでの勤務経験もある武田氏が解説します。
月14万円じゃ足りません…要介護の「寝たきり高齢者」が直面する悲惨 (※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代…増える老後の負担

人生100年時代といわれ、以前より長生きできるようになりました。しかし、少子高齢化により年金の受給開始が遅くなったり、介護の期間が延びたり、と老後の負担は増しています。

 

老後は現役時代の仕事や子育てなどの責務から解放され自由な時間がたっぷりあります。 自分らしいセカンドライフを過ごすため、しっかり事前の準備をしておきましょう。

年金の受給開始年齢が引き上げに

年金の受給開始は60歳から65歳に引き上げられています。それに伴い定年も60歳から65歳へ引き上げられつつあります。以前であれば60歳からが老後でしたが、いまは65歳からが老後の認識でしょう。

 

また、昔の高齢者は寿命も短く、老後の趣味活動も活発ではありませんでしたが、最近では趣味を楽しんでいる人もたくさんいます。

 

老後の生活費は仕事をしていた現役時代とあまり変わらない人も多いようで、退職して仕事はなくなりますが、自由な時間が増えることで支出も増えている人がいます。しかし、現役のときには給料で多くの収入があった人でも、年金生活になると収入が減ってしまいます。

 

たとえば、年収が600万円の人であれば年間の手取りは約460万円です。 ボーナスを加味せず単純に月収に換算すると約38万円になります。しかし、現役期間の平均年収が600万円の人の年金受取額は約223万円で月に計算すると約18万円です。

 

仕事をしていたときの収入と年金の受取額では月々20万円の差になります。 現役時の金銭感覚のままで老後も過ごしていると、大変なことになります。

 

総務省『家計調査』によると、 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯))については、 実収入は236,576円、 可処分所得は205,911円です。 消費支出は224,436円で、月々2万円ほど足りない状況です。

 

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)についてみると、 実収入は135,345円、可処分所得は123,074円です。 消費支出は132,476円で、こちらは1万円ほど足りません

 

月々1~2万円程度であれば現役時代の貯蓄や退職金などで十分にカバーできるでしょう。