医療の発達や飽食などさまざまな理由により、長寿化が進む日本。しかしその陰で、「8050問題」「老々介護」といった問題も深刻になっています。81歳夫婦のもとで暮らす50歳の息子は、30代半ばで実家に出戻り。実家にお金を入れず、すべて自分のことに使っています。不安を抱えた夫婦に、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPはどのような助言を行ったのでしょうか、みていきましょう。
「かわいい息子。働いているだけで充分よ」…81歳“年金暮らし夫婦”と50歳“ひとり息子”の深刻な現状【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

81歳のX夫妻…50代息子が居座るも、“働いているだけで充分”と笑顔

今年81歳になるX夫妻。現役時はお2人とも新卒で就職した役所で公務員として働き、定年まで勤め上げました。現在は持ち家の一軒家で年金生活を送っています。年金受給額は2人で月32万円ほどです。

 

自宅は地方の住宅街にあり、住宅ローンは完済しています。定年退職してからは夫婦で年に2回ほど旅行に出かけていましたが、最近は体調が優れないことから、自宅で穏やかに過ごしています。

 

息子のDさんは東京の大学へ進学後、そのまま東京で就職し働いていましたが、30代半ばに実家へ戻ってきて以降、自身が子供時代を過ごした部屋で暮らしています。可愛い息子が帰ってきた嬉しさから、X夫妻はDさんを無条件で迎え入れました。実家へ帰ってきた理由について詳しくは聞いていません。

 

その後、Dさんは地元の企業に転職し働きましたが、やがてそこも辞めてしまいました。その後も転職を繰り返した結果、50歳の現在は非正規雇用で、年収は350万円程度です。

 

日本の平均年収に満たない状況ですが、本人は年収の金額について特に気にしていない様子です。というのも、Dさんは家にお金を入れることもなく、食費や光熱費なども負担していません。実家のため家賃も必要ありませんから、収入はすべて自分のために使うことができていたのです。

 

夫は、息子が正社員でないことや、転職を繰り返していることが気になっていました。一方、妻は「かわいい息子と一緒に暮らせているんだもの。働いているだけで充分よ」と、楽観的でした。しかし……。

 

自分たちが元気なあいだは問題ありませんでした。ただ、最近は年のせいもあり、夫婦ともに体調を崩しがちで、病院にかかることが増えてきました。また、退職後に大規模な自宅のリフォームを行ったこともあり、貯金残高もそこまで余裕がなくなってきています。

 

「お金も減ってきているし、これから先、息子と自分たちの生活は大丈夫だろうか?」心配になった夫妻は、社会福祉協議会で講演を行っていた筆者のFP事務所へ相談に訪れました。