老後2,000万円問題が叫ばれて久しい昨今。その言葉通り、70歳の時点で2,000万円もの預貯金があったDさんでしたが、老人ホーム入所後わずか7年で尽きてしまうことに……いったいなにがあったのでしょうか。社会福祉士として実際に有料老人ホームの管理者としての経験もある、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也氏が解説します。
年金月15万円の70歳女性…2,000万円の預金を7年で喰い尽くした、驚きの老人ホーム請求額 (※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代…老後の30年、どう過ごす?

人生100年時代といわれるようになり、老後の期間は昔に比べてはるかに長くなりました。60歳から90歳までと考えると30年間ありますが、この期間をあなたならどのように過ごされますか? これまでできなかった旅行や趣味活動をしたいと張り切っている方も多いのではないでしょうか。

 

ただ、なにをするにしても心身健康であることが重要です。人によっては仕事がなくなった途端に老けこむなんて方もいらっしゃいます。老後を迎える前から「どのような老後を過ごすのか」考えておかなければ、大変な目に遭うかもしれません。

“なるべく快適な暮らしを”…息子の思いから介護つき老人ホームに入所したDさん

70歳の女性Dさんは、年金生活を送っています。ご主人に先立たれたいま、1人で借家住まいをしています。近くに息子家族が住んでいるため、定期的に息子さんが様子を見に来ていました。

 

ある日息子さんがDさん宅を訪れると、いままでになく鼻をつく刺激臭がしました。なにかと確認してみると、室内に溜まったゴミの臭いです。

 

そのときは息子さんが片づけをして帰りましたが、次に訪問した際にもゴミが溜まっています。さらに、いつもは身なりを清潔にしているDさんがパジャマのままで、最近はお風呂にも入っていない様子。おかしいと思った息子さんがDさんを病院へ連れて行ったところ、認知症の疑いがあるということがわかりました。

 

息子さんはそれからも定期的にDさん宅を訪ねていましたが、このまま母親を1人にしておくのは心配で、老人ホームへ入所させることにしました。なるべく快適でいい施設で過ごしてもらいたいという思いから、24時間体制で介護の受けられる「介護付き老人ホーム」に決めました。

 

Dさんが施設に入所してからも、息子さんは変わらず定期的にDさんに会いに行きました。ここは専門のスタッフが常駐しているうえ、なにかあればすぐに病院とも連携がとれます。清潔な身なりで楽しそうに過ごしているDさんを見て、息子さんは安心して日常を過ごすことができました。

 

ただ、3年、5年と月日が流れたのち、息子さんはあることに気づきました。Dさんの預貯金が残りわずかとなっていたのです。