誰もが夢見るマイホーム。しかし、不動産営業マンのセールストークや周囲の意見に流されず、自身の収入やライフプランに沿った価格で検討できなければ、幸せな生活が一転、最悪の場合「破産」「差し押さえ」という最悪の結末を迎えるかもしれません。FP Officeの久保雅巳氏が、マイホーム購入計画の立て方について、2組の夫婦のエピソードをもとに解説します。
「全額ローンのマイホーム」で撃沈…42歳・公務員、毎月の返済額に「もう、ムリ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

周りからよく聞く「皆さんこれくらいですよ」の危険

住宅購入相談に来られた方がよくいわれるのは 「不動産会社の営業マンに『このあたりで購入を検討されるとこれくらいは必要です』や『お客様くらいの方は皆さんこれくらいの物件を購入されていますよ』といわれたから」 「会社の人に聞いても同じくらいで買われている人が多いので」 などなど……。

 

みんなと一緒は安全でしょうか?  家庭によって、生活費は異なります。総務省統計局の「2021年1~3月期家計調査」で集計された平均的な生活費を見ても、世帯人数ごとで生活費は変わります。

 

出所:総務省統計局 家計調査家計収支編/総世帯を参考に作成
[図表6]2021年1~3月期家計調査 出所:総務省統計局 家計調査家計収支編/総世帯を参考に作成

 

当然各家庭によって普通の水準は違います。ご自身の普通とはどのようなものか考え、無理のない返済計画を立てましょう。

 

また、子供の人数、教育への考え方も各家庭によって違います。 大学に進学する、しないだけではなく、高校、中学の私立校、公立校、習い事の数、種類など各家庭によって違うでしょう。

 

「子供の進路なんてわからない」とよく聞きます。もちろんその通りなのですが、どこまで準備してあげたいかを考え、住宅費以外の資金もふまえ購入価格を検討しましょう。

 

[図表7]幼稚園~大学までの進路別学費合計

第2子の誕生を機にマンション購入を検討したBさん夫婦

世帯年収 780万円 

マンション購入 6,000万円(頭金500万円) 

購入時 夫42歳 会社員(年収 780万円) 妻35歳 専業主婦 子2人(6歳、0歳)

住宅ローン返済期間 35年

年間返済額 182.8万円(月額11万9,000円+ボーナス払年2回20万円)

 

ご主人が電車通勤ということもあり駅前のマンションを検討、ボーナスを併用すれば今の家賃とそれほど変わらないと考えて、思い切って5,500万円のマンションを購入しました。

 

購入直後はそんなに負担を感じませんでしたが、当初は月6,000円程度だった修繕積立金が年々上昇、5年後には9,800円に値上げ。今後5年ごとに値上がりし、最終的には20,000円程度になる予定であることが判明しました。

 

さらに、夫の勤務地が変わって車通勤になり、子供の送り迎えなどに車がもう1台必要となったため、駐車場代が倍に……。

 

現在、夫48歳、妻41歳、子12歳、6歳。来年から第1子が中学校に進学するため、塾に通わせたいと考えています。

 

また、第2子も小学生になるので習い事も増やしたいのですが、車の購入により貯蓄は半減しています。子供の学費は学資保険などで貯めているものの、自分たちの老後資金の準備はまったくといっていいほどできていません。

 

このままでは立ち行かないと、妻はパートを検討しているとのことですが、「あくまでも扶養の範囲で」という考えです。