紫外線の影響で「皮膚ガン」に発展することも
農村地域で皮膚科の診療をしていると、しばしばご高齢の方の顔面に「日光角化症」という、ガンの初期といえる変化をみつけます【図3】。これは、若い頃に外で紫外線に当たる機会が多かった方に生じる皮膚の変化です。
「日光角化症」は悪性化した表皮細胞が表皮の中にとどまっている前癌状態(早期のガン)です。さらに放っておくと、「有棘細胞ガン」という「皮膚ガン」を発症します。日本の高齢化が進み、こういった皮膚ガンの症例数は増加の一途を辿っています。
「皮膚ガン」にはいろいろな種類があります。この他にも「基底細胞ガン」、日光暴露部にできる「悪性黒色腫(メラノーマ)」の一部は紫外線と関連しているとされています。いずれもきちんと治療する必要があります。
忘れた頃にやってくる、紫外線が影響する「皮膚ガン」。その発症リスクを減らすためにも、若いうちから紫外線の防御は大事なのです。
紫外線から皮膚を守るにはサンスクリーン剤が有効
メイクをする習慣がある人はクレンジングや洗顔、化粧水や乳液などのスキンケアとともにサンスクリ−ン剤の使用も比較的身近かもしれません。それでも、夏、外に出るときだけ使えばいいと思っている方も、まだまだたくさんいます。
日差しの強い時間帯の外出を控えたり、帽子や日傘、長袖の服などでの物理的な防御をすることもある程度は有効です。
しかし、しっかり防御するためには、皮膚の露出部にサンスクリーン剤を塗ることが必要です。夏だけではなく、できれば1年中使うことをおすすめします。
さまざまなサンスクリ−ン剤のタイプ
市販されているサンスクリ−ン剤にはたくさんの種類があるのでどれを選ぶか迷ってしまう方もいるかもしれません。テクスチャー(触感)の違いで分けると、クリーム、ローション、ジェルなどがあります。
クリーム、乳液状のローションにベタつきを感じる場合にはジェルや、より液体に近い感触の水溶性ローションを選ぶとよいでしょう。スプレータイプのものもありますが、皮膚が成分を吸収するリスクがあるので顔面への使用は避けた方がよいです。
サンスクリーン剤の強さ表すSPFとPAの違いは?
サンスクリーン剤には必ずSPFという表示があります。これは「Sun protection factor」の略でUVBをどれだけ防御するかという指数です。1から50+という表記で示されます。
もうひとつ、PAという表示があります。これは「Protectoin grade of UVA」といってUVAの防御指数です。+〜++++という表記で示されます。
炎天下でのレジャーなどではSPF50++、PAも+++以上の強いものをおすすめしますが、日常の戸外での活動ではSPF15〜30でも十分です。水に強いタイプは洗顔だけでは十分に落としきれないことが多いので、きちんとクレンジング剤を使用して落とすることも必要です。
スキンケアの基本は「洗顔・保湿・遮光」
皮膚というのは一番表面、表皮の上に「角質」があります。この角質は強力な皮膚のバリアで、外からの刺激をはねのけて有害なものが表皮や真皮に入ってこないように守っています。
紫外線も表皮に作用することでメラニンが増えたり、表皮細胞の悪性化を招いたり、真皮の「膠原線維」や「弾性線維」を変性させます。そういった影響の防御の役割をしてくれているのが角質です。
お手入れされていないカサついた質感の皮膚では、角質の皮膚バリアとしてのはたらきが不十分になります。角質をいい状態に保ち皮膚バリアを強くすることは、さまざまなトラブルから身体を守り、見た目も若々しく健康な皮膚を保つことに繋がります。日常のスキンケアはとても大事なのです。
スキンケアの基本は「洗顔・保湿・遮光」です。汚れと乾燥は皮膚の老化の敵です。洗顔や保湿にも気を使うことで、サンスクリ−ン剤の効果をより高め、紫外線の悪い影響から皮膚を守ることにつながります。将来の皮膚トラブルを予防し、見た目も若々しい健康な皮膚を守るために、ぜひ正しいスキンケアに取り組みましょう。
永井 弥生
オフィス風の道 代表
皮膚科医・産業医・医療コンフリクトマネージャー
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