人類はすでに不老不死を叶えていた?
「老化は治る」。嘘のような本当の話です。前稿で『老化は治療対象の疾患である』ということが世界最先端の研究者たちの間ではもはや常識であることを述べました(【⇒関連記事:「老化は“病”である」。世界保健機関(WHO)も肯定…驚愕の“新常識”】)。この“医学の常識”がひっくり返ることで、日常にある“医療の常識”、それを担う“医師の常識”も変わるであろうことも。読者の方の健康寿命が変わり、日常が変わり、ライフプランが変わるのです。
このグレートローテーションはいかにして起きたのか? よりよくご理解いただくために、細胞レベルで“老化”の本質を捉えてみようと思います。次稿の『遺伝子レベルで見る“老化の本質”』と併せて読むことで、理解がいっそう深まると思います。
ではさっそく、今回の本題に移ります。
『テロメア点滴』をご存じでしょうか? 不老不死が叶うともてはやされ、『1回1億円』のアンチエイジング医療等といった都市伝説を聞かれた読者の方もいらっしゃるかもしれません。なんとも胡散臭い話だと思いませんか? このテロメア及び、それを延長するテロメラーゼの研究者であるエリザベス・ブラックバーン博士は2009年10月5日、ノーベル医学賞・生理学賞を受賞しています。そう、実は、人類はすでに、『不老不死』の現実的な手段を手にしていたのです。
細胞レベルで見た老化研究の始まり、老化細胞の発見
ここで、細胞研究の歴史を紐解いてみます。
物事を深掘りする際には、細分化して整理するのが鉄則です。ボヤっと全体像を眺めているだけでは二進も三進もいきません。一人の人間という“個体”に対する研究は、こうして、生物としての基本単位である“細胞”レベルに細分化して始まることになりました。
世界中の研究者がしのぎを削る中、1961年、最初の転機が訪れました。「生殖細胞や幹細胞といった特殊な細胞を除き、(体)細胞は無限に分裂できる」という“医学の常識”がひっくり返ったのです。発見者の名前にちなみ、現在、細胞分裂回数の限界は“ヘイフリック限界”と呼ばれています。細胞は50~60回程度の細胞分裂をしたら、その後は細胞分裂をすることができず、締まりのない外観を呈するようになります。これが老化細胞と呼ばれる状態です。
あくまで実験室での単純で理想的な環境での出来事ではありますが、複雑怪奇な生体内の環境でも同様のことが起きている可能性は高いです。“細胞”の老化を通じて、“個体”の老化に対する洞察が得られた一大転機となったことは論を俟(ま)ちません。
そして、このヘイフリック限界こそ、先述のテロメアと密接に関わっています。