(※写真はイメージです/PIXTA)

色が黒く、一見ほくろに見えてしまう皮膚がんがあります。いわゆる「ほくろのがん」のことです。皮膚の悪性腫瘍の中でも特に悪性度が高く、進行すると内蔵転移を生じて手遅れになってしまうことがあります。どのように注意したらいいのでしょうか。専門医が分かりやすく解説します。


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ほくろと皮膚がんとの見分け方

どうなったら危ないのですか?と聞かれます。がんであっても痛くもかゆくもありません。「こうなったら危ないですよ」と言い切れるものではありませんが、ひとつの目安になるのがABCDEと呼ばれる兆候です。

 

•Asymmetry(不整形): 形がいびつで左右非対称
•Border(境界):輪郭が不鮮明で境界が不明瞭
•Color(色):黒や茶色が混ざり色調が不均一
•Diameter(大きさ):直径6mm以上
•Evolving(拡大傾向):拡大し、色・形・症状が変化

 

見た目でも強く疑われることもありますが、専門医はダーモスコピーという皮膚専用の拡大カメラのようなもので観察します。これを使って、がんが疑われるか、まず普通のほくろでよいか、ある程度の判断はできます。

 

もちろん絶対ではないので、少しでも疑わしいい場合には切除して病理組織診断が必要です。ただし、メラノーマだった場合には早くに次の治療へ進みたいので、そういった治療ができる大きな病院での診療が望ましいです。

 

▶足の裏のほくろはあぶない?

実はほくろ(色素性母斑)にも種類があり、足の裏にできるほくろは皮膚の表皮と真皮の境界部に母斑細胞が集まるタイプです。メラノーマの初期も同じ部位に悪性化した細胞が出現します。そのため、どちらも黒い平らなシミのように見え、小さなものでは見分けがつきにくいのです。末端黒子型というタイプは足のうらにできるもので、比較的頻度が高いということもあります。

 

ダーモスコピーの所見は有用ですが、確定診断には切除して病理組織学的な確認が必要です。突然出現した、ちょっと色が濃いかも、といった「ほくろ?」に気づいたら受診しましょう。

 

▶黒いできものはいろいろ

悪性ではない黒いできものもいろいろあります。代表的なのは、顔のシミ(老人性色素斑)、老人性のイボ(脂漏性角化症)、普通のホクロ(色素性母斑)などです。

 

鑑別が必要な皮膚ガンとして「基底細胞がん」というのもあります。これは顔面によくできるもので、がんではありますが、メラノーマのように他に転移することはありません。

悪性黒色腫(メラノーマ)の治療

どんながんでも早くみつけて早く治療できるほうがよいに決まっています。早期であれば完全に治癒させることは十分可能です。診療ガイドラインがありますので、それを基本として、がんの進行具合によって治療方針を決めていきます。

 

切除だけでよいのか、リンパ節までとる手術をしたほうがよいのか、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬(話題のオブジーボなど)等々、状態によって選択します。

 

様々な有効な治療の選択肢が増えて進化していますが、他の臓器に転移してしまうと命に関わることはあります。小さなものでも進んでしまうことがあるのがメラノーマのこわいところです。

レーザーで簡単にほくろ取り、が危険なことも

ほくろだと思ってレーザーで治療をした、レーザー治療では病理組織の確認ができません。1年後にその周囲にしこりが出現、肝臓と肺にも転移していた、その「ほくろ」はメラノーマだった、とはじめてわかる、ということもあるのです。安易な治療は危険です。

 

ほくろみたいに見えるがん、メラノーマの早期診断は難しいことがあります。見えるところにあるのに、長い間気づかないで進行してしまっては残念です。

 

全身を気にして見て、気になるできものがあったら、積極的に皮膚科専門医を受診しましょう。

 

永井 弥生
オフィス風の道 代表
皮膚科医・産業医・医療コンフリクトマネージャー

 

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。

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