(※写真はイメージです/PIXTA)

老化とは「抗えない生理現象」ではなく、「病」である…。今、医学の常識が一転しつつあります。WHOが2019年に採択した「IDC-11(国際疾病分類)」でも、明確に“老化”の概念が盛り込まれました。老化研究はどのようにして始まり、現在どの段階まで進んでいるのか。銀座アイグラッドクリニック院長・乾雅人医師が「細胞レベルで見る“老化の本質”」を解説します。

医学はどこまで万能なのか?

先述のダザチニブとGLS-1阻害剤。いずれも抗がん剤であることは非常に興味深い話です。

 

抗がん剤投与により老化細胞が生じ、その老化細胞を除去するために抗がん剤を投与する。何とも摩訶不思議な話です。医学はかくも複雑怪奇な学問で、すべてが叶うような魔法の薬はなく、医師もまた万能ではないのです。それでも、人類は膨大な先人たちの偉大な叡智、巨人の肩に乗り、歩みを進めてきました。今回もまた、同じく。

 

“老化の本質は何か?”

 

極めて深淵な問いです。一つの学問、一つの切り口だけで結論を出すことは、「木を見て森を見ず」に陥りがちです。複数の学問、複数の切り口から総合的に判断し、それをretrospective(回顧的)に評価して、やっと本質の辺縁が掴めます。『細胞レベルで見る“老化の本質”』だけで答えは出ないのですが、読者の方の理解が深まる一助になれたのなら、望外の喜びです。次回の『遺伝子レベルで見る“老化の本質”』と併せて、深掘りしていただければ幸いです。『人類は老化という病を克服する』。

 

 

乾 雅人

医療法人社団 創雅会 理事長

銀座アイグラッドクリニック 院長