(※写真はイメージです/PIXTA)

「老化は治る」。今、医学の常識が一転しつつあります。WHOが2019年に採択した「IDC-11(国際疾病分類)」でも、明確に“老化”の概念が盛り込まれました。老化とは万病に共通する驚異的なリスク因子であり、もはや、人類が克服すべき治療対象の疾患と定められているのです。銀座アイグラッドクリニック院長・乾雅人医師が、「遺伝子レベルで見る“老化の本質”」を解説します。

「加齢」と「老化」は違う

「老化は治る」。科学技術の進歩により、今まで分からなかった“老化の本質”が見えてきています。従来、老化とはそこにある生理現象であり、「加齢≒老化」でした。しかしながら現在、「加齢≠老化」となっています。

 

加齢に対応する年齢は暦年齢(chronological age)であり、生年月日と現在の日時のみで決まります。その進行速度も一定です。一方、老化に対応する年齢は生物学的年齢(biological age)であり、個体や細胞、遺伝子の状態により、変動することはもちろん、その進行速度も加速したり減速したり、巻き戻ったりします(詳細は前々稿『「老化は“病”である」。世界保健機構(WHO)も肯定…驚愕の“新常識”【医師が解説】』をご参照ください)。

 

では、その抽象的な概念である生物学的年齢(biological age)を測るのに、実際にどのような物差しが適切なのでしょうか。フィットネスジムで測定する体年齢? エステで測定する肌年齢? 医療機関で測定する血管年齢? いずれも、個体の老化全体を測定するには不十分です。一定の科学水準を満たす答えの一つが、エピジェネティック・クロック(epigenetic clock)です。エピゲノム(的)年齢、いや、もう「エピゲ年齢」とでも呼びましょう。居酒屋で話題にして、サイエンスを身近に感じてください。造語であることだけはことわっておきます。

 

このエピゲノム(epigenome)とは何を意味するのでしょうか。文字通り、epi=外の、genome=ゲノムです。どうやら、ゲノムという「個体が持つ遺伝情報の総体」がキーワードになりそうです。これこそが、遺伝子レベルで見る“老化の本質”なのです。

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