(※写真はイメージです/PIXTA)

急性心筋炎とは、今まで元気に生活していた人がかぜなどをきっかけに、数日の間に進行して心臓の筋肉に炎症が起こる病気です。軽症例は自然に治ってしまいますが、重症例ではショック状態となり命にかかわる怖い病気です。循環器専門医が知っておくべき基本的な知識を解説します。

ショック状態となり命にかかわる劇症例も

心筋炎は気付かないうちに発症し、自然に治ってしまう軽症例から、ショック状態となり命にかかわる劇症型まで様々な重症度があります。

 

多くの心筋炎は重症例でも数週間のうちに炎症が収まり心臓の動きは元どおりに回復しますが、一部では炎症が長引いて、慢性心筋炎から慢性心不全に移行したり、心臓の動きが回復せずに命を落としたり、心臓移植を考えないといけない状況に陥ることもあります。

 

心筋炎の診断に至った場合は入院治療が必要です。入院して、24時間心電図をモニターしながら、心不全や不整脈に対して対処療法を行います。内服薬や点滴、重症例ではペースメーカーや人工呼吸器などの機械を使用した心肺補助療法が必要になることもあります。

コロナワクチン後の胸の痛みはどうすればいい?

新型コロナウイルスワクチン接種後に、まれに心筋炎や心臓の膜の炎症である心膜炎を起こすことが報告されています。症状は胸の痛みや動悸などです。ワクチン接種後4日後くらいまでに起こることが多く、特に10代や20代の男性に多いといわれています。

 

したがってワクチン接種後に胸痛や動悸などが出現した場合は循環器内科を受診して、心電図と胸部X線をまずチェックしてもらいましょう。ワクチン接種後の心筋炎、心膜炎はあっても軽症のことがほとんどです。また、検査で異常がなくても胸の痛みや動悸がおこることもありますが、そのような場合は自然に治ってしまうことがほとんどです。

 

ワクチン接種後のこのような症状は軽微なことが多く、新型コロナウイルスに感染後に心筋炎や心膜炎を起こした場合の方が、重症化するリスクが高くなります。したがって、このようなリスクがあるとしても、ワクチンを打つメリットのほうが大きいと考えられています。

大事なことは重症例の早期発見

急性心筋炎とは一般にかぜ症状の後に心臓に炎症が起こる病気です。軽症例では軽い胸の症状だけで自然に治ってしまいますが、重症例だと心不全や危険な不整脈によって命にかかわる病気です。子供から大人まで幅広く発症する可能性があります。大事なことは重症例の早期発見です。そのためには“心筋炎を疑うことが第一”です。

 

具体的には、のどのかぜ、おなかのかぜ症状のあとに、胸の痛み、動悸、息切れ、息苦しさなどの胸の症状が出てきて、普通じゃないな、と思ったときにクリニックや病院で心電図と胸部X線を確認してもらうことです。これが診断の手がかりになります。かぜ症状の後には、まれですが心筋炎の発症があることを覚えておいてください。

 

品川 弥人
しながわ内科・循環器クリニック 院長

 

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。