(※写真はイメージです/PIXTA)

急性心筋炎とは、今まで元気に生活していた人がかぜなどをきっかけに、数日の間に進行して心臓の筋肉に炎症が起こる病気です。軽症例は自然に治ってしまいますが、重症例ではショック状態となり命にかかわる怖い病気です。循環器専門医が知っておくべき基本的な知識を解説します。

心筋炎は命にかかわる怖い病気

急性心筋炎という病気を知っていますか? 新型コロナウイルス感染やコロナワクチンの後に稀に発症することが知られており、最近よく耳にする方も多いのではないでしょうか。

 

この病気は一般に普通のかぜ症状やおなかのかぜ症状がおこり、その数時間から数日後に胸の痛みや動悸、息切れなどの心臓の症状がでてきます。

 

軽症例は自然に治ってしまいますが、重症例ではショック状態となり命にかかわる怖い病気です。知っておくべき基本的な知識をわかりやすくまとめたので、ご覧ください。

 

心筋に炎症が起こり、心臓の動きが悪くなる

急性心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症がおこり、心臓の動きが悪くなり心不全を起こしたり、危険な不整脈を発症する病気です。

 

一般に普通のかぜ症状(悪寒・発熱・頭痛・筋肉痛・全身倦怠感)やおなかのかぜ症状(悪心・嘔吐下・下痢など)がおこり、その数時間から数日後に心臓の症状がでてきます。一般的には数日以降に発症することが多く、かぜ症状と心臓の症状にタイムラグがあることも一つのポイントになります。

 

心臓の症状とは、胸の痛み、動悸、息切れ、息苦しさなどです。重症な例だと酷い倦怠感や冷や汗、意識障害などを伴うこともあります。

 

しかしこのような胸の症状は心筋炎だけに起こる特別な症状ではなく、気管支炎や肺炎でも起こる症状です。したがって症状だけで心筋炎と診断することはできないのです。

 

診断には病院で診察をしてもらい、心電図や胸部X線を確認してもらうことが必要です。胸部X線で心不全を疑う所見や、心電図で危険な不整脈や心筋傷害を表す所見があれば診断の手がかりになります。

 

最終的には循環器内科を受診して、心エコーで心臓の動きを確認したり、採血で心筋の傷害を表す心筋トロポニン値の上昇などを確認し、確定診断のためには入院して行う心臓カテーテル検査が必要になります。

かぜのウイルス感染後に炎症が起こる

多くの心筋炎は風邪のウイルス感染後に心臓に炎症が起きることによって発症します。ほとんどの場合は風邪症状だけで治るのですが、風邪のウイルスがきっかけとなり、心臓の筋肉に炎症が起きると心筋炎が発症するのです。

 

一般に発症するかどうかにかぜ自体の重症度は関係ありません。軽いかぜの後でも発症することがありますし、かぜが長引けば心筋炎を起こしやすいわけでもありません。コクサッキーウイルスをはじめとした多くの一般的なかぜウイルスが原因となりますが、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスでも心筋炎の発症が報告されています。

 

また、ウイルス感染以外にも細菌や真菌(カビ類)、自己免疫、薬剤、アレルギー、膠原病などが原因となって発症する場合もあります。そのような原因の場合には先行するかぜ症状は必ずしも認められません。

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。