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昭和のニュータウンが抱える課題
昭和時代に誕生したニュータウンの多くは1970~1980年代をピークに居住者の減少がはじまり、2000年代に入ると過疎状態に陥ります。いずれのニュータウンも世帯数は過去とほぼ変わらないものの、一世帯の居住者数が徐々に減っていくのです。
その原因は、ニュータウンで生まれた子どもたちが大人になり、他の地域で暮らすようになったためです。タウン内の世代バランスは著しく偏って高齢者ばかりになり、加えて住宅の老朽化、タウン内商業施設の魅力低下により外部のショッピングモールへ買物に行く住民も増えるなど、ニュータウンの空洞化は深刻になっています。
そのため、全国各地のニュータウン管理組合ではさまざまな解決策を講じています。千里ニュータウンでは、タウン内の空き店舗にコミュニティ施設や生活支援施設を積極的に誘致し、住民生活を支える核として機能する仕組みを構築しています。多摩ニュータウンでは、住宅のリフォームや生活道路の整備、地域包括ケアと連携した街づくりを推進することで生活機能の再生を図っています。
令和のニュータウンは「スマートシティ」化がカギに
「スマートシティ」とは、AI、IoTなどの新技術やデータを活用した先進的な街づくりのことです。政府関係省庁も「スマートシティ官民連携プラットフォーム」と銘打って全国各地で計画されているスマートシティへの取組をサポートしています。
その主な内容は自動運転技術を活用した公的移動手段「MaaS(Mobility as a Service)」の導入や、産学官のデータ連携基盤「DX(Digital Transformation)」の構築など、既存の住宅地内にスマートシティ概念に則った先進技術を投入するものがほとんどです。そんな中、このスマートシティ構想をベースに、まっさらな土地で新たな街を創り出すという動きもあります。
◆Woven City(静岡県 裾野市)
自動車メーカー・トヨタの東富士工場跡地において2025年の入居開始を目指し建設中のニュータウンが「Woven City(ウーブンシティ)」です。計画面積は約70.8haで、初期人口は360人、将来人口は2,000人を予定しています。スマートシティ構想を網羅したこのニュータウンでは、地上に人や自動運転車を中心とした公共交通網の道路を配置し、地下空間には配送や物流中心の道路を造ることで安全で効率的な移動環境を確立します。
加えて、NTTとの連携によるスマートシティプラットフォーム(データマネジメント・情報流通、デジタルツイン)の構築、日清食品との連携による食を通じたウェルビーイング(身体・精神・環境的に良好な生活状態)の実現を目指します。
まとめ
戦後の高度成長期に誕生したニュータウン(大規模住宅分譲地)での暮らしは、当時の若いファミリーの憧れの的でした。統一感のある美しい街並み、人車分離の安全な通路のほか、買物・教育・医療などの生活利便施設まで揃う理想の住環境です。
関西では「千里ニュータウン」、関東では「多摩ニュータウン」「千葉ニュータウン」「港北ニュータウン」がよく知られています。創成期はいずれも開発面積1,000ha、居住人口10万人を超えるビッグタウンでしたが、年月を経る毎に過疎化が進み、“時代遅れ感”が否めなくなっています。
これら往年のニュータウンが街再生に努力するかたわら、AI、IoTなどの新技術やデータを活用したスマートシティ構想を掲げた次世代志向のニュータウン(「ウーブンシティ」等)も誕生しつつあります。
若いファミリー世帯が多く暮らす往年のニュータウンに求められたのは「タウン内で暮らしがすべて完結すること」でした。現在これらのニュータウンが衰退しているのはこの閉鎖的な街づくりが原因なのではないかとも考えられますが、先進のニュータウンであるウーブンシティにおいてもこの思想は変わらず盛り込まれているようです。
コロナ禍によってリモートワークが当たり前となり、都心・地方の二拠点生活(デュアルライフ)に注目が集まる昨今、新旧を問わず、郊外にあるニュータウンの存在価値も見直されるかもしれません。