あなたにオススメのセミナー
社会経験が乏しい若者層に、古くからの住民が困惑…
ワンルーム条例を定めなければならない理由として、多くの自治体が「ワンルームマンション等建築物の建築に伴う紛争を未然に防止するため」「地域の生活環境の維持向上及び良好な近隣関係を形成するため」などとしています。
ワンルーム住民による騒音問題(友人多数を呼んで飲み会、深夜にTV・オーディオや楽器等を鳴らす)、ごみ捨てルールが守れない等々、社会経験が乏しい若者層の身勝手さに、古くから暮らす地域住民が困り果てている姿が想像できます。加えて、一人暮らしの若者は住民票を居住先に移さない人も多く、自治体の住民税増収につながりません。税制貢献度が低いことも絡んで、ワンルーム条例による規制がより強化されたのではないかという声もあります。
ワンルーム条例に「抜け道」あり!
条例を順守して建てたら、ワンルームが完売でもファミリータイプが売れ残ってしまったり、ワンルームだらけの賃貸マンションにファミリー層が寄り付かず空室が続いたりなど、不動産業者は売買のみならず賃貸でも苦戦を強いられることになります。そこで考えるべきはワンルーム条例の回避策、すなわち「抜け道」です。
★条例対象戸数未満で建てる
最も手っ取り早いのは総戸数を減らすことです。規制対象となる総戸数は自治体により異なりますが、概ね10~30戸未満で建築計画を立てれば条例から免れます。容積率いっぱいに建てることを避けたり、土地を分筆して筆毎に一棟ずつ建てるという手段もあります。ただし分筆・多棟の場合は所有者が同一人物だと「条例逃れ」を指摘される可能性があります。
★社会貢献型シェアハウスにする
近年東京都内に増えているのが総戸数50戸超の単身者向けシェアハウスです。一戸の専有面積は15m2前後で、水回り(洗面・トイレ・シャワールーム・キッチン・ランドリー等)は共用設備を使用するスタイルになっています。
本来であればこういったシェアハウスはじめ寄宿舎、下宿、長屋形式の物件もワンルーム条例に抵触するのですが、国土交通省が提唱する空き家活用のための「シェアハウスガイドブック」を流用すれば、ワンルーム条例の厳しい縛りを掻い潜ることができそうです。
同ガイドブックによると、「シェアハウスの入居者は20~30歳代の社会人や学生が最も多くなっているが、低額所得者・高齢者・障害者など住宅の確保に配慮を要する方々(住宅確保要配慮者)も想定される」とし、生活困窮者の入居を厭わないシェアハウス運営を推奨しています。このように“社会貢献の一環”という大前提があれば、たとえ1戸の専有面積が小さくても、総戸数が多くても、投資用シェアハウスは建てられます。
以上のような回避策が考えられますが、条例改正があればこれらの手段は使えなくなるかもしれません。そもそも、ワンルームという建築物自体がトラブルを起こしているわけではなく、根本的な問題は若者と古い住民との確執にあります。
国交省の「シェアハウスガイドブック」では、「ゴミ出し、騒音、共用部の利用方法といった基本的なもののほか、感染症対策、地域コミュニティへの配慮など、入居者の生活ルールの設定・管理」をオーナー側に強く求めています。両者が歩み寄り、良好な近隣関係を形成することができれば、ワンルーム条例による縛りなど不要になります。
まとめ
「ワンルーム条例」とは、若者層向けの賃貸マンションを新築する場合、ファミリータイプの間取りを一定割合で混入させなくてはならないというルールです。この条例は、賃貸ワンルームに住む若者と古くからの地域住民の間で繰り広げられる騒音問題やゴミ捨てルール違反等さまざまなトラブルを解消するために定められました。
東京23区内の自治体では、総戸数10~30戸以上のマンションを対象に規制を行っていますが、これにより不動産業者の収益マンション企画や販売活動に支障が及んでいます。条例を回避する方法としては、条例の対象となる総戸数未満でマンションを建てたり、生活困窮者救済という社会貢献を目的としたシェアハウス建築等の手段が考えられますが、根本的な問題は若者と古い住民との確執にあるため、それが解消できればワンルーム条例など不要です。