(※写真はイメージです/PIXTA)

日々の生活のなかで、膝の違和感や痛みをおぼえたことのある人は少なくないでしょう。ただしその違和感は一瞬であることが多く、気にしていない人が多いのではないでしょうか。しかし、世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏先生は「放置すると認知症のリスクが高まる」といいます。それはなぜか、詳しくみていきましょう。

変形性膝関節症がますます悪化する「負のサイクル」

変形性膝関節症を放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

 

1.歩く距離や運動量が減少し、活動範囲が狭くなる

膝の痛みが原因で歩くことが負担に感じ、活動範囲は狭くなり、おのずと運動量が減少します。

 

2.1日の消費カロリーが減り、肥満が進む

運動量が減れば、当然1日の消費カロリーも減少します。そのため肥満傾向が強まり、ますます膝に負担がかかります。

 

3.高血圧や高脂血症のリスクが高まる

運動量が減ることで、高血圧や高脂血症など生活習慣病のリスクも上昇します。

 

変形性膝関節症を招く重大な要素は、肥満です。特にコロナ禍、外出自粛など行動範囲が狭まる生活スタイルが定着したことにより、いわゆる「コロナ太り」に悩まされている人も多いのではないでしょうか。そういう方は、「変形性膝関節症」に要注意です。「太る→膝が悪くなる→動きたくない→ますます太る」という、負のサイクルに陥ってしまいます。

膝の痛みがある人は「認知症リスク1.7倍以上」のワケ

さらに怖いのは、変形性膝関節症を放置すると「認知症のリスクが高まる」ということです。

 

大阪大学の研究によれば、65~79歳で「膝の痛みがある」という人は、痛みがない人に比べて、認知症発症リスクが1.7倍高まることがわかっています※。

※ https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=2652&room_id=549&cabinet_id=174&file_id=6368&upload_id=7351

 

さらに、「65~79歳で膝の痛みがあり、毎日30分以上の歩行習慣がない」という人はもっと認知症の発症率が高く、膝の痛みがなく、歩行習慣がある人に比べて、「1.91倍」もリスクが高くなることがわかりました。

 

体を動かすと、脳の神経を成長させる「BDNF(脳由来神経栄養因子)」というタンパク質が海馬で多く分泌されます。海馬は記憶を司る部位ですから、BDNFがたくさん分泌されることで海馬の機能は維持され、海馬そのものも肥大します。

 

さらに、運動をして体を動かすことで血流が活発になり、海馬などでの血流量も増加します。血流量が増加すれば、脳に酸素や栄養素が行き届くようになりますから、認知症予防には効果的といえるでしょう。

 

しかし、膝の痛みがあればこうした運動を積極的に行うことができません。脳に刺激が行き届かなくなり、脳血流量も低下して、認知症を招きやすくなってしまうのです。

 

変形性膝関節症は、単純に膝の痛みだけの問題ではありません。高血圧や高脂血症、認知症などを招きやすくなりますし、また、症状が進めば日常生活もままならなくなり、要介護の状態になることも……。

 

さらに、痛みや違和感を放置していると、最初は片足にしか症状がなかったとしても、無意識にその足をかばうことにより、逆の足にも症状が出ることがあります。

 

「膝の違和感」に心当たりのある人は、一度近くの病院を受診することをおすすめします。

 

 

塗山 正宏

世田谷人工関節・脊椎クリニック

院長

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。