世の中には「不安を煽る人」が多いので…
老後資金に限りません。世の中には不安を煽る人が多いので、気をつけましょう。評論家は、「困りました。心配です。不安です」という方が「大丈夫です」というよりも面白い話が出来るので、顧客の人気を得るために悲観的な話をしたがる人が多いようです。
マスコミも、不安を煽るほうが「大丈夫です」というより視聴率等を稼げるので、不安を煽る報道を好む傾向にあるようです。たとえば景気が悪化したときには「大不況が来る可能性は小」と書くより、「大不況の初期症状かも」と書きたがるわけです。
筆者もマスコミから取材を受けることがありますが、筆者は楽観派なので「大丈夫でしょう」というコメントが多いのです。すると、「それでは記事になりませんので、何かひとつでも心配な材料をご指摘下さい」と言われることがありますから(笑)。
マスコミによる政府批判も、人々を不安にする
マスコミは、政府批判のために政府に都合の悪い報道をする場合があります。政府に都合の悪い報道は、国民を不安にする場合が多いのです。財政赤字が大きいので政府が破産するかもしれない、将来は年金がもらえないかもしれない、政府の経済政策が悪いからだ…といった具合です。
たとえば、政府の年金運用は3ヵ月ごとに損益を発表していますが、儲かったときは小さく報道し、損したときは大きく報道するのが普通です。そこで、政府は年金運用に失敗して損をしていると思っている人も多いようですが、平均株価がこれだけ上昇しているときに、損をしているはずはありません。平均株価が大きく値上がりしたのに、年金は少ししか儲かっていない、という程度のことはあるかもしれませんが。
マスコミは、政府を監視するのが仕事であるはずなのですが、マスコミのなかには政府を批判するのが自分の仕事だと思っているところもあるようです。マスコミに向かって文句を言っても仕方ありませんから、マスコミの情報に接したら「もしかして政府を批判するための記事かも」と身構えてみるのも有益かもしれませんね。
マスコミと異なり、野党は政府を批判するのが重要な仕事の一部です。したがって、野党が政府に都合の悪い話を積極的にするのは当然なのですが、こちらは情報の受け手が最初から身構えていますから、情報によって直ちに不安を感じるということは少ないかもしれませんね。
もっとも、野党支持者の中には、政府批判は心地よいので耳に入りやすく、政府がうまくやっている点は耳に入りにくいという人がいるかもしれません。そうした人は、年金破綻等々のリスクに怯えすぎる可能性がありますので、要注意です。
不安を煽って商品を売りつける輩に注意!
世の中には、不安を煽って商品を売りつけようとする輩も多いのです。
「悪霊に取り憑かれないように壺を買いなさい」といった人ばかりではありません。
「老後資金が足りないなら、投資で増やしましょう」と言って投資商品を売りつけようとする人、「万が一のときに困るから保険に加入しましょう」と言って保険を勧誘する人、等の中にも、不安を煽って儲けようという魂胆を持った人が混じっているかも知れません。
もちろん、顧客のことを本当に心配している人のほうがずっと多いのでしょうが、見分けるのは容易でありませんから、もし勧誘を受けたら、一度冷静に自分自身のリスクについて考えてみて、それでも不安だったら投資商品や保険の購入を検討するという、ワンステップを設けることが有用かもしれませんね。
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塚崎 公義
経済評論家