中国当局が発表する経済指標の信頼性、なお疑念絶えず
国家統計局は上期経済実績を発表した際、「第二四半期は各地で感染が再拡大するなどで、経済に大きな下押し圧力がかかったが、各地区・部門が効果的な感染防止対策を総合的に実施し(統筹〈チョウ〉)、経済社会が効果的な発展を示した結果、そうした圧力に耐え(頂住)プラス成長を実現した」と強調。
しかし周知の通り、以前から中国当局の発表する経済指標の信頼性には疑義が呈されている(連載『中国「経済統計」の信頼性を探る~統計水増し、矛盾の背景は何か?』参照)。とりわけGDPについては、以下のような点から、統計に水増し(注水)があると言われてきた。
①中央が発表するGDPと各省市区が発表するGDPの合計が大きく乖離している(必ず後者が上振れしている。特に各地GDP規模で加重した成長率)
②GDPと他の統計数値の動きが整合的でない。
中央と地方の統計の乖離については近年、少なくとも表面的には解消されているが(図表1)、他の統計との整合性の問題は引き続き残っている。今回も中国内ネット上では、下記を勘案するとプラス成長というのは理解し難く、当局としては、ゼロコロナ政策堅持を主張している関係上、マイナス成長にはできなかったが、あまり高いプラス成長でも疑念を招くので、0.4%というわずかにプラスの数値を政治的に設定したとする声がある。
①国家統計局が発表した上海、北京、吉林の第二四半期成長率は各々▼13.7%、▼2.9%、▼4.5%と軒並み大幅なマイナス成長になっている
②上海を含む長江デルタや深圳と広州を含む珠江デルタなど重要経済地域も大きく落ち込んでいる
③財政部が別途発表した上期税収は前年同期比15%の大幅減だった。
さらに国家統計局が上期実績発表の際、ホームページに掲載した2021年以降の四半期前年同期比成長率の推移を示したグラフは(図表2)、安定的で緩やかな下降曲線にみえるよう、成長率を表す縦軸目盛が不必要に▼10%~30%の大きな幅に設定されていることも(実績は0.4%~18.3%)、ネット上で「掩耳盗鈴」、つまり耳を塞いで鈴(元の語源は鐘)を盗む→隠してもすぐわかる自己欺瞞的な行為とやゆする声がある。
ちなみに自然体でグラフを作成すると、(図表3)のようになる。裏を返せば、中国当局が引き続き成長率の数値を気にしているということでもある。